15話(4日目)唐突な状況変化


4339年 5月5日 9:10

首都:ユリの都

ブルーアルストロメリア学院

 

本来の依頼完了日数まであと2かと半日


アリスは今日も生徒のふりをして登校するが心はどこか落ち着かなかった。


正直いえば家庭科室がただの思い過ごしなら手がかりはゼロになり振り出しに戻るその状態から2日で怪人を見つけれるかは五分五分だ。




アリス「…怪人が目覚める前に調べたいが……その前に…….」



アリスはそう呟いて医学部の学生が多く集合しているサークルに顔を出した。



アリス「あのー。すみません。」


医学部生1「おや?入会希望かい?」


まだ朝だというのに結構な人数が集まっていておそらくサークルの部長である生徒がそう声をかける。


アリス「いえ、今日ベロ・フォルテさんを見た方いませんか?


昨日体調不良で早退したとお聞きしたのですが…」


医学部生2「ベロちゃん?……えーと。」


皆が何か気まずそうに顔を合わせる。


アリス「……何かあったのですか?(……まさか)」


医学部生3「…それが、昨日、早退する前に自主退学届を出して受理させてたらしいの。」


アリス「っ!?(…落ち着け、今焦ったところで

起こったことは変えられない。

もう少し昨日、怪しんでいれば…)」

思わず目を見開くアリス


医学部生1「俺たちもすごく驚いているんだよ。彼女、このサークルには入っていなかったけれど毎日放課後図書室に残って勉強してるくらい頑張ってたから。」

残念そうに言う医学部生の一人


アリス「…そう、か。ありがとうございます。


(……怪人だ。今まで居なくなった人で

行方不明になった時間帯踏まえて

人目の少ない

放課後しか狙わないと思い込んでいた完全に俺の落ち度だ。)」



周りの人たちも例の行方不明の犠牲者になったのかもしれないと話しているがアリスには届いてない。


そのままお礼を言うとすぐさま家庭科室へと急いだ。

___________________________________

ブルーアルストロメリア学院 家庭科室


アリスは誰も居ないことを確認して鍵を閉めるとそのままあたりを見渡して深呼吸した。



アリス「(…まず一つ、一つ、整理しよう。


一つ。自主退学書の筆跡は行方不明者本人たちのものだった。

 


一つ。自主退学したものは前日までそんな様子はなかった


一つ。書いた本人と同じ筆跡の書類をどう準備したか。

人間を洗脳できる怪人


一つ。学院長や先生のあまりにも元生徒に対しての無関心な態度。


一つ。学院長が行方不明者がで始めた頃に

出勤時間を変えたこと。


一つ。最初は人目の少ない放課後に攫われて何かされてるんだと思っていたが


おそらく一瞬ほんの一瞬人目をつがない瞬間があればいい。)」


アリス「そして、攫った人間を捕食するにしろ保管するにしろ必要なのは広くて誰にもその場所がバレないところ。


調理室とカーテン一枚で繋がっている家庭科室から得体の知れない物音が聞こえるのを踏まえると」


アリスはそう言って床のタイルを一マス一マス軽く叩いていく。


アリス「…やっぱり全体的に床から下の空間に響いてるな。

こう言うのはたいていどっかのタイルが地下に繋がる梯子とか階段とかになってるんだけども…… ここの四つのタイルだけ少し新しいな。」


アリスはちょうど家庭科室と調理室の中心あたりにのタイル四つに触れてみる。


アリス「似ているけどここだけ材質が違う。

ここ四つは鉄……か。

………さて、どうやったら開くかな。」

アリスは少し引っ張ったりスライドしたりすると数字のパネルが出てきた、


アリス「.……っと暗証番号入力用モニターのお出ましだな?


…番号は分からないからハッキングしてあげた方が早いな。」


アリスはスマホを取り出してケーブルと数字パネルを繋いだ。



何やらスマホを操作して数分。


ピッ と言う電子音と共にパネルにロック解除の文字が浮かび上がる。


アリス「よし、開いた。」


アリスは数字パネルの横にある開閉というボタンを押すと


4枚のタイルがスライドして開き階段が現れる。


アリス「ビンゴ…かな。

でも、この隠し扉を開け閉めする音を生徒が聞いたわけじゃないな。


ってことは」


アリスは階段を降りていく。


アリス「(…俺の考えが正しければ

自主退学書を書いたのも昨日の体調不良を訴えたベロ・フォルテもあの学院長も本人……


ただし)……怪人に操り人形にされた本人だけど。」

アリスが階段を降りるとそこには


恐ろしいほどリアルで魂の抜けた人形たちが糸で釣られている。


それも家庭科室と調理室を繋げた地下丸々だ。


アリス「(一昨日見た学院長そのものだな。やはり本人を人形にしたのか……いや、本人そっくりの人形の中に本人が入っているのか……



通りでお昼からの出勤なわけだ操る本体が

寝てるんだから。


この分だと操った時の人形が中にいる本人の記憶を読み取って模倣しているのかな?


なんにせよ学院長を人形にして操って学院に住み着いていたんなら


バレないと思ったのは懸命だな。


感触は木彫りの人形だが。)」


アリスはそっと学院長の人形にそっと触れると


ギギィッと軋む音がした。


アリス「(生徒が聞いた音はこの人形の軋む音だな。


操られてない時は本物の木の人形だからか

こんな音が鳴るのか?)」


アリス「(怪人もやっぱりまだ寝てるな。……今のうちに写真撮って……早急にアイアンさんに次の指示をしてもらうか)」


アリスは揺籠に包まれて眠っている怪人を横目にスマホで人形の写真と怪人の写真を撮る。


アリス「(……写真…これくらいでいいか。

人形全部、行方不明者の人数と容姿も合致するし。)


……すまん。俺が判断をミスったばっかりにこんなこのになって。


必ず助けるから。」


アリスはそういうと目の前のベロ・フォルテの人形にそっと声をかけた。



そしてアリスはすぐその場を離れて地下室の扉を閉めると


急用を理由に学院を早退することにした。

____________________________



首都:ユリの都 

ホテル:ホタルソウ404号室



アイアン「……なるほど人を人形に変えて

本人そのものの様に操る怪人…ですか。」


アリス「あくまで現場を見た俺の予想ですが。」


アイアン「いえ、間違いないでしょうね。」


兎丸「どうする?今から乗り込んでぶっ飛ばす?」


アリスはホテル帰ってくるとすぐさまアイアンメゾを呼び現状を伝えた


アリス「ダメです。

相手はほんの一瞬で人間を人形に変える様な奴だ。

いきなり乗り込んだら生徒に危害があるし。


人形になった人たちを人質に取られたら終わる。


まずはその辺考えて作戦考えないと。」



アイアン「明日、さっそくお二人にももちろん行っていただきますが。


より人数が必要になりそうですね……ハクギンに助けを要請します。」


アリス「ハクギンって確かアンドロイドの…」


兎丸「冷気を使うんだよ!この前見た時は怪人が一瞬でカチコチだった!」


アリス「そりゃいいな。

学院長は怪人が操ってるから昼から動き出す。

それまでに別の先生に事情の証拠を説明してアンドロイドを中に入れてもらうのが得策だろう。」


アイアン「そうですね。すぐに手配します。」

アイアンはそう言ってどこかに電話し始めた。


兎丸「ねぇ!私は?私は?明日、その怪人ぶっ飛ばせばいい?」


兎丸はアリスの服の裾を引っ張ってそう言った。


アリス「人形にされた人達に危害を加えない様にならいいけど。


おそらく敵は人形を盾に使ってくるぞ?」


兎丸「あ、そっか!じゃあどうやって倒すの?」

難しい顔をして顔をひねる兎丸


アリス「ヒント。人形の動きを止めるには?」

そんな兎丸に楽しそうにそういうアリス

兎丸「うーん?えーとっね!ロープでぐるぐる巻きにする!」


アリス「うんうん、ではさらに

そんなに時間がなくて。ロープだと引きちぎられる可能性もあることを踏まえます。」


兎丸「え、うーん…めっちゃ頑丈なワイヤー……は時間がないからダメか。


怪人が起きる前に人形どっか別のところにやっちゃう??」


アリス「それでもいいけど。怪人は俺たちの見えないところで学院長の人形を操ってるところを見ると多分離しても操れるよ」


兎丸「!じゃあさ!じゃあさ!ハクギン君に全身凍らせてもえば絶対身動き取れないね!」


アリス「正解。

ただ、それでも周りには氷漬けにされた人形は居続ける。

それを壊さない様に配慮して戦うことがお前にできるか?」


兎丸「盾にされたり攻撃に使われたら難しいけど

置物を避けて戦うことならできる!…と思う。」


アリス「よしっ。なら任せる。」


兎丸「でも、人形はもともと人間なんだよね?冷凍して大丈夫?」


アイアン「心配入りませんよ。ハクギンというヒューマノイドが使っている冷却は

人間のコールドスリープに使われる冷気と同じものなので。


自然解凍で解決できます。」

電話を終えたアイアンはそう言いながら二人の元へ戻ってきた。



アリス「.…まぁ人形から人間に戻るかどうかは怪人次第だからそこは分からないけど」


兎丸「わかった!!」


アイアン「こちらも。ハクギンの準備は整いました。

明日の朝12時にブルーアルストロメリア学院の門の前で待機させておきます。


学院の方は今は学院長がいらしているらしいので明日の早朝あなた方が到着する前に事情を説明して生徒全員を早退させます。」


アリス「分かりました。ありがとうございます。……ところでハクギンが明日、俺たちに協力したら街の見回りをするアンドロイドがいなくなるんじゃ?」


アイアン「ご心配には及びません。本日、この国の二体目のアンドロイドが完成したので見回りはそちらのお任せしますので。」


アリス「タイミングが…あーなるほどだからこのタイミングで本格的に学院の調査を依頼したのか。」


アイアン「はい。見事なタイミングで証拠を掴んでいただきありがとうございます。


引き続きよろしくお願いします。」


アリスの納得した顔を見てアリスはニコリと笑うと


ホテルを後にした。

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