弟が持っていた妖刀を修理することになったんだが

景文日向

序章

俺には、歳がそう離れていない弟が居る。その弟って言うのがまた奇怪なもんで、刀を扱える。というか、刀と一心同体だ。妖刀使いとでも言うのだろうな。本人は「お宮さん」と呼び愛している刀。

「どうしてお宮さんなんて呼んでるんだよ」

と本人に訊いても、

「お宮さんがそう名乗ったんだよ」

と返ってきただけだった。訊くだけ無駄だな。

そんな俺の弟、伊東伊波いなみは熱海で旅館の経営をしている。もっとも、伊波は損得に鈍いので金の管理は妹である河奈かなが仕切っている。その河奈も、同じく刀使いである。名前は「寛一さん」。やっぱり刀が自らそう名乗ったらしい。


それ以外に不審な点は無いので、俺ももう慣れてしまった。そして、事件というのは慣れてしまった頃に起こると相場が決まっている。

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