青年F

@miyuki-mahiro

第1話 日常1


日々の心の叫びを感じているのですね。


辛い中でも前に進もうとしている中でのご連絡と思います。


この辛さや思いを話してみませんか。





時々、猛烈に押し寄せる感情。


どうすれば楽になれるのか、答えは未だ見つからない。



    ◆■ 青年F ■◆



??「おーい見浪(みなみ)、来てるなら先にPCチェックしといてくれ」


見浪「あ、平(たいら)さんおはようございます。わかりました」


自分の名前は見浪健一(みなみけんいち)、営業会社に勤めるサラリーマンだ。


転職を繰り返してやっとこの会社に入った。


幸いな事に同じ様な境遇の人が多く、それなりに上手くやっている。


平「テレアポバイトの応募が早速来てるぞ、後で連絡して面接手配しといてくれ」


見浪「わかりました」


自社開発食品の個人、法人定期購入の提案、受付。

事業者へホームページ作成の提案。

飛び込み営業…等等。


創業6年目の若い会社だが、多角経営が功を奏したのかまだ潰れていない。


ただアルバイトと派遣社員に頼りっきりで、休みが取れないのがネックだが。


見浪「〇〇さんのお電話でお間違い無いでしょうか?この度はアルバイトのご応募ありがとうございます、つきましては早速面接の日程を……」


web会議が終わってすぐ応募者に連絡。

5名の内3名と通話し面接日が決まった、残りの2名は折り返しか再連絡となる。


平「まあ3~5人採れればいい方か。テレアポの仕事なんだから今の電話応対も評価しておけよ」


午後は人員稼働の調整をしてまたweb会議。


規模が大きくなって来たので、本社機能をオフィス街に移動すると役員が話している。


??「そーやって無駄使いするから傾くんだよね会社って」


見浪「如月さんもそう思いますか」


如月「自慢じゃないですけど私が居た会社、ことごとく潰れてますからね」


見浪「経験者は語るってやつですか」


この人は如月三依(きさらぎみより)さん。

アルバイトではあるがテレアポチームのリーダーをしている。


如月「と言うか課長、会議はイヤホンして出席した方が良いですよ?作業場から離れてるといっても情報漏れちゃうじゃないですか…」


見浪「出来るだけオープンにしたいんだよ。同じ会社の人間には。」


如月「まあ課長が良いなら良いんですけど。平部長はその辺厳しいから気を付けて下さいね」


本当は会議にも会社にも関心が無いだけなのだが、余計な心情は言わないのがマナーだ。


見浪「部長の機嫌損ねるとみんなが困るもんな…ごめん気を付けるよ」


如月は手をひらひらさせて作業場へ戻って行った。


自分は主に食品テレアポ部隊の管理を任されている。


法人との契約時には当然自分も出向くのだが、個人の契約はパンフレットを送付するかネットで購入契約をしてもらえば良く

食品のテレアポ部隊は追撃営業とアフターフォローがメインだ。つまり馴れてしまえばルーチンワークで済む。


一応クリーンな会社と言う事でやっているので、営業電話は17時で終了。

クレームその他の対応はコールセンターに依頼してあるので、この事業所は18時には退勤出来る。


平「見浪、帰るぞ」


見浪「あ、はい」


平部長は上司にしては珍しく冷静な人だ。


自身の担当以外にも複数の部署を管理していてストレスも多いはずなのだが、無理難題は言わないしいきなり切れたりもしない。


ただ真剣で無い相手には厳しい。


ニュアンスは難しいのだが、会議をイヤホン無しで聴くとかがそれに該当するようだ。


平「で、どうだ。いい人は見つかったか?」


見浪「いえ…中々」


平「おまえは少し遊んだ方が良い、仕事ばかりに根詰めると燃え尽きちまうぞ」


見浪「皆のお陰で毎日楽してますから…大丈夫ですって」


平「さっさと人を育てておまえは休め」


ネットで拡散されたら凄い勢いで炎上しそうな台詞だが、何分自分も古い世代の人間なので休みが無いのが当たり前な感覚で生きている。


結局二人共時代錯誤なのだ。


綺麗とは言えないワンルームに帰って来た。


住めば都とはこの事だろう。引っ越して来た時は家賃で選んで後悔したが、2年も住むと完全に自分の城だ。


米をセットし風呂に入り、米が炊ける前にビールと総菜のから揚げをつまむ。


結局酔って米は食べずに寝るのがルーチンだ。


だが今日はなんだか眠れない。


何故だ。


『おまえは少し遊んだ方が良い…』


頭の中で部長から言われた言葉が反芻する。


遊んだからって人生が好転する訳じゃあるまいし、こんなの気にする必要も無い。


だがどの職場でもこれを言われる。


そんなにつまらない人間なのだろうか。


ギャグだって言うし、下ネタだって時には話す。


得意とは言えないが恋愛だってそれなりにはしてきた。


わからない。


わからないが、考え出した途端暗い感情が押し寄せて来た。


苦しい。


このまま生きていて意味があるのだろうか。


【生きる 意味】

【死ぬと どうなる】

【人生 無意味】


ひたすら検索をしては、サイトを開く。


答えなんて存在しない。


~今すぐ、相談する~


もう何回この画面を見ただろうか。


一度だけ電話をした事がある。


何度コールしても繋がらなかったが、逆に繋がったらどうなってしまうのか。





気が付くと朝だった。


暗い感情は無くなっている。まだ、大丈夫だ。


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る