2023 05 26
浜のブローカーTさんのこと(その5)
Tさんは、バブルの頃は儲かったようです。しかし、そのバブルの後が、もっと儲かったようです。
Tさん曰く「バブルの頃はよう。表の店で売れるんだな。裏のブローカーなんて売れる訳ないんだな。バブルの後でブローカーの暗躍があるんだ」
その頃(1995年頃)にTさんに会ったのです。店の前にベンツが止まっていると、車からTさんがやって来たのです。
Tさん曰く「こんな田舎町にも画廊があるんだな。儲かっているか? 儲かってねぇーだろ」
これが最初の言葉でした。赤のGパンにアロハシャツ、黄色のサンダル…怪しい? 宝石、時計、ブランド品のバック、美術品、絵画もやっていると云うと、これは相当に怪しいとしか思えませんでした。ですが、品物は自分には到底手が入る類の品物ではなかったのです。
その頃、Tさんから電話がありました。
Tさん、「シンワオークションのカタログにダイヤの50カラットの原石が出てるけどよ。あれよ、本物だぜ。お前よ、シンワの会員だったよな。名前貸せ」
私、「しかし、50万円スタートですよ。本物で50万は無いでしょう」
Tさん、「本物だぜ。顕微鏡まで買って調べたんだ。俺が云ってるのだからな。オークションのスタッフも大したことないな。秋葉原の宝石屋もぜんぜん大したことないな」
私、「名前は貸しますが、請求書なんかやって来たら困りますよ」
Tさん、「分かった。絶対に面倒な事にはならないからな」
実際に、Tさんは500万円で落札したのです。Tさんとインド人の最後の二人になり、インド人は引きました。しかし、その夜、インド人から電話が掛かりました。3000万でどうかと云う交渉でした。無論、NOでした。そのインド人は、「おめでとう」と云ったそうです。ダイヤの原石で、Dカラーなんて日本人には分からないと思ったのですね。
Tさん曰く「日本には、この俺が居るよ。インド野郎、舐めるんじゃねぇーぜ」
ちなみに、8000万円でベルギーのアントワープの宝石商に売ったらしいのですが、少しして、税務署から私の方に問い合わせがありました。私は、名前を貸しだけで、5万円しか受け取っていませんと云ったところ、翌日、税務署から全部清算は終わってますとの連絡がありました。
税務署の職員曰く、「8000万円の名義貸しで手数料5万円はちょっと少ないですね。もう少しあってしかるべきだと思いますよ」
G7とやらで、広島であるそうです。三日前から米軍の戦闘機とか自衛隊の戦闘機がたくさん飛んでます。戦闘機ですから、やたらうるさい音です。旅客機も飛んでますが、各国の首脳も乗っているのでしょうね。もしかしたらゼレンスキーさんも居たのかも。広島空港は今治と海峡隔てた三原市にあるので、実際、直線距離50キロです。戦闘機だと2~3分で飛んで来ます。何度もやるので閉口してました。
ですが、隣の愛媛県警も千人単位で応援するので「ネズミ捕り」とか「駐車違反」とか「飲酒違反」は殆どありませんでした。空はうるさいのですが、地上は静かでした。
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