長屋-5

 長四郎、燐、一川警部、絢巡査長の四人は、被害者の遺体が安置されている監察医務院へと向かった。

 手続きを終えて、遺体が安置されている部屋へとされる。

「こちらが該当のご遺体です」

 監察医務院の職員は、遺体が入っている遺体収納袋のジッパーを開ける。

「どうぞ、終わったら教えてください」そう告げて、自分の仕事に戻って行った。

「にしても、この高校生の子と瓜二つやねぇ~」

 一川警部は遺体の顔をまじまじと見ながら感心する。

「そうですねぇ~」絢巡査長もまた遺体顔をまじまじと見つめる。

「うん?」

 遺体の頭部を観察していた長四郎が何かに気づいた。

「長さん、何かあったと?」

 三人は長四郎が見ている視線の先に、目を向ける。長四郎が見ていたのは髪の毛であった。

「これ、髪染めてるよね?」

 長四郎は黒髪の間から薄っすらと見える金髪部分を指差して三人に問う。

「ホントだ。でも、それが何?」燐がその真意を尋ねる。

「これ、ヘアカラースプレーで髪の毛染めているように見えるのは、俺だけ?」

「いや、だから。何で、ヘアカラースプレーで髪の毛を染めているのがダメなの?」

「これ色落ちというより、染め残しに近い感じだろ」

「そうかもだけど」

「ラモちゃん、長さんが言いたか事はねぇ、この髪の毛が急遽、染められたんじゃないかって言いたかとよ」

「だったら、最初からそう言えば良いじゃん」

 一川警部の解説を聞いて、納得した燐は長四郎に悪態をつく。

「ああ、首元にスプレーの液体が垂れたような跡がありますね」

 そう発言したのは絢巡査長であった。

「あ、ホントだ。流石、エリート」長四郎は素直に絢巡査長に賛辞の言葉を送る。

「どうも」

「もしかして、何かの工作で髪を染めたって事?」

「そうだろうね。てことは、普通に殺されたわけじゃないよね。注射痕もある事出し」

 燐の質問にそう答える長四郎は、ニヤッと笑みを浮かべる。

「でも、今、早急に知りたいのはこの被害者さんの身元ですよね」

「そうだね。よしっ、それは、俺に任せてくれない?」

「長さんが調べてくれると? 助かるばい」

「長さん。それで、私達は何を調べれば?」

 絢巡査長の質問に少し考えて、長四郎は口を開いた。

「じゃあ、発見現場でさ。このヘアカラースプレーの塗料の成分が検出されるか。調べてきて欲しい」

「分かりました。他には?」

「他ねぇ~」

「私からも良いですか? 一太郎君の家族について調べてもらえませんか?」

「おい、ラモちゃん。それを調べるのは俺の仕事」

「俺じゃなくて、俺たちでしょ」

「ラモちゃん。もしかして、首突っ込む気」

「当たり前でしょ」

「はぁ~」深いため息をつく長四郎。

「じゃあ、各自で捜査開始!!」

 一川警部の号令を受け、捜査を開始した。

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