始動-14
遠山は自白した後、すぐに三田署へと連行されていった。
「よしっ、帰るか」
長四郎は遠山がパトカーに乗せられていくのを見送ると、そのまま帰ろうとする。
「待ちなさいよ」
燐に首根っこを掴まれ、帰るのを制止される長四郎。
「何するの? 服が伸びちゃうじゃない」
長四郎は少し寄れてしまった服を伸ばしながら、燐に文句を言い放つ。
「何で、殺すに至ったのかを知りたくないの?」
「いいや」
「即答かよ」
「一川さん。俺、帰って良いですよね?」
「ええばい」
「何でよ。あんたも気になるでしょ。ハゲ刑事!」
「ラモちゃん、それ禁句」
長四郎が眼を覆いながら、顔を伏せる。
「え?」
燐が一川警部の方に目を向けると、一川警部は顔をゆでだこのように顔を真っ赤にしながら燐を睨み付けていた。
「あ~もう手遅れ」
「ちょっと!!」
燐は身の危険を感じ、咄嗟に長四郎を盾にしてその場から逃げ出す。
走り去っていく燐を眺める男二人はハイタッチを交わすのだった。
それから、数日後。
長四郎は遠山の浮気調査の報告書を作成していると、事務所のドアが蹴破られる。
「おわっ!!」思わず変な声を出す長四郎。
「ふ~ん。ここがあんたの事務所なんだ」
そう言いながら、部屋に入ってくる燐は部屋を興味深そうにキョロキョロと見回していく。
「何しに来たの?」
身構えながら長四郎は用件を尋ねる。
「何しに来たって。事件の真相を話に来たの」
「真相?」
「てかさ、来客があったらお茶とか出すじゃん。普通」
渋い顔をしながら長四郎は、燐にペットボトルに入った市販の紅茶を出す。
燐はすぐにそれを飲み、「じゃ、始めるわね」と長四郎が止める前に話始めた。
遠山と愛華の出会いは、二年前。
愛華が大学生三年生の時、コンパで出会った。遠山からの猛アピールで付き合う事になった。
そこから順調に愛を育んでいたのだが、つい最近、遠山の浮気が発覚した。
愛華は敢えて問い詰めることはせず、今回、浮気現場を抑えて問い詰める事するにしたらしい。
そして、事件当日、仕事を休んで遠山のデート先に先回りして事件現場の店で待ち伏せする愛華。
愛華は頃合いを見計らった後に、遠山をトイレに呼びつけたらしい。そこで痴話喧嘩となり、愛華を突き飛ばして殺してしまった。
遠山はすぐに男子トイレへと逃げ込み、気を見計らって逃げ出し何食わぬ顔でやり過ごそうとしていたらしい。
「ということが分かったのよ」
「そうですか」興味なさそうに返事する長四郎。
「何、その反応? なんか、ムカつく」
「お忙しい中、わざわざ来て教えて頂きありがとうございました」
長四郎は燐に帰るよう促す。
「チッ! ネットに悪口書いてやるんだから」
燐はそう悪態をつきながら出ていった。
「参った。客だ・・・・・・」
長四郎は燐が使っていたコップを流し場に持っていこうとする。
「長さん。ラモちゃんが怒って出ていったばい」
入れ違いで一川警部が事務所へと入ってきた。
「あ、もうそんな時間でしたね」
「そうばい。忘れんとって」
「すんません。じゃ、行きましょうか」
長四郎はコップを流し場に置くと、一川警部と共に三田署へと向かった。
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