始動-5
「ストーカー? 本当か?」
長四郎を睨み付ける南志見に、長四郎は首を大きく振りながら否定する。
「ちょっと、署まで来てもらおうか!」
南志見は長四郎の手を取り連行しようとするが、長四郎は必死に抵抗する。
その様子を見て、他の刑事達も協力し始め長四郎の身体は胴上げの状態で店から連れ出されそうになっていた。
「訂正しろ! 女子高生!!」
燐は返事せず、下を出してあっかんべーをする。
「冤罪だ!」
そんな長四郎の言葉も刑事達に響くことはなく、ドアが開けられ連行される一歩手前で刑事達の足が止まった。
ドアの向こうに、自身の光り輝く頭をペチペチと叩く人物が立っていた。
「あ、ハゲ刑事!」
「ハゲぇ~」と顔をしかめながら、「連行!!」の二文字をハゲ刑事こと
「ウソ、ウソです!! とっても素敵なナイスガイな刑事さん。助けて!!!」
長四郎のその言葉を聞き入れた一川警部は、「離せ!!」と今度は命令する。
その瞬間、刑事達は長四郎の身体から手を離し長四郎は地面に叩きつけられる。
「痛っ」
「長さん、お久しぶり」一川警部は地面に寝転がる長四郎に声を掛ける。
「お久しぶりです。すいません。お忙しい中、来てもらって」
「気にせんとって。長さんとの仲じゃないと」
「そう言って頂けると助かります」
「で、殺人事件やったよね?」
「はい。でも、客の女性が殺されたって言う事だけしか分かっていないですけど」
「OK. じゃあ、十年ぶりの捜査再開と行きましょうか」
「うす」
「捜査再開じゃない。あんた、どこの所属だ?」
ここで南志見が二人の会話に入ってきた。
「ああ、申し遅れました。あたし、新設された部署の人間ですたい」
一川警部はそう言いながら、自身の名刺を南志見に手渡した。
“警視庁 捜査一課 命捜班 班長 ”の文字が名刺に記載されていた。
「こんな部署、聞いた覚えはないぞ」
年下であろう刑事に溜口を聞かれ、少しカチンとくる一川警部は笑顔を保ちながら、「ホントですか? はいたぁ~ 実績がまだまだ足りんらしいばい。長さん」と長四郎に話を振る。
「そうなんですね。としか、俺は言えないすよ」
「そげん冷たい事言わんで欲しかったぁ~」そう言いながら、自身の頭をペチペチ叩く一川警部。
「本部の人に出張ってもらう事件ではないようですけどね」
「それを決めるのは、お前じゃない」とドスの効いた声で南志見に言う一川警部。
その一言に、南志見はムッとした表情を見せる。
そんな事お構いなしに長四郎と一川警部は、南志見を無視して店に入るのだった。
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