第22話 学校に行くのは何のため?
パロルと一緒に割れた鏡の破片を掃除した後、私達は浜辺へと向かった。この町は森だけでなく港もあった。とはいっても、
その『昔』というのがいつなのかと聞いてみると、二十年前だと答えた。という事はパロルは最低でも二十代でラングはーーあまり人の年齢は考えないでおこう。
私とパロルは桟橋の先に腰を掛けて、終わりのないだだっ広い海面を眺めていた。お互い何も言わずにそれだけを見つめているのも仲が深まった証拠なのかもしれない。これがもし初対面だったら耐えられなくて逃げ出していただろう。
「……モローちゃんって、この町に来る前は何をしていたの?」
「……え?」
急にパロルに話かけられて少し驚いた。が、無視したらマズイと思ったので「学校に通っていました」と答えた。
「ガッコウって何?」
「えっと……知らない事を勉強する所です」
「図書館で本を読むだけじゃ駄目なの?」
「えーと……」
そういえばこの町には学校は存在しなかったっけ。でも、パロルの言う通り、ただ知らない事を知るだけなら本を読めばいい話だ。
じゃあ、学校に行く意味はなんだろう。頭の中で思い出せる限りの学校の記憶を思い出し、若干のフィルターを掛けて検証した結果、ある答えに辿り着いた。
「恋をするためじゃないですか? 本だけ呼んでも運命の人とか会えないですし」
「恋か……ロマンチックだね〜! 私も運命の人と出会いた〜い♡」
パロルは私の答えが気に入ったのか、両手を組んで星に願うようなポーズで恍惚とした表情を浮かべた。
私はなんて間抜けな答えを出してしまったんだと自分で咎めた。恋なんてロクにした事ないのに、学校に行くのは恋をするためとか……自分の顔を殴ってやりたい。
でも、そんなことをしたらまたパロルを心配させてしまうので、海面の向こうで水しぶきを上げて飛ぶトビウオを見ていた。
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