第9話 この町のモーニングルーティン

 鐘がもう一つ鳴れば、大体の住民は朝ごはんを食べるらしい。


 私は手を洗ってからリビングに行き、パロルと一緒にご飯を食べた。


 今日はかぼちゃ蒸しパンとトマトとリーフレタスのサラダだった。


 この世界には家畜の肉や卵、乳製品というものはない。魚だけが唯一の動物性たんぱく質だ。


 けっこうヘルシーな感じだが、私の胃袋は基本的に朝に弱いので、これくらいの食事がちょうど良かった。


 それにこのかぼちゃ蒸しパンがフカフカで甘くてほっぺたが落ちるくらい美味しかったので五、六個食べたらお腹いっぱいになった。


 その後は顔を洗って歯磨きをする。この世界には蛇口を捻れば水がちゃんと出てくるし、洋式のトイレやお風呂だってある。


 歯磨き粉は恵みの灰と海塩と粉末状にしたナス、ココナッツオイルで出来たものを使っている。


 瓶に入れられたものをスプーンですくって歯ブラシに乗っけて磨く。


 本当にこれで磨けるかなと思ったが、前世よりも歯の白さや口臭が改善されているような気がした。


 口の中が綺麗になったらシャワーを浴びて、ドライヤーで髪を乾かした後、着替える。


 長身の鏡で自分のコーディネートを見る。無地のズボンに無地のシャツ。うん、バッチリ。


 ファッションチェックが終わったら、パロルのアトリエに行く。


 家の隣にある小屋は彼女が作業している。


 戸は開けっ放しなので、中を覗いてみる。


 所々に絵画が飾られていて、そこら中に絵の具や筆が散在していた。


 パロルは一枚のキャンバスに筆で何かを描いていた。


「パロル、いってきます!」


 私が呼びかけると、彼女は私の方を向いた。


「うん! いってらっしゃい!」


 笑顔でそう言うと、また作業に戻った。


 私も小屋を後にして、フラフラと散歩した。


 駅前にこの町の全体図があったので見てみる事にした。


 文字は私のいた世界と同じで、すぐに看板を読む事ができた。


 どうやら、この町は住民が住んでいる地域と商業施設がある地域に分かれているらしい。


 住民達の家は密集している訳でなく、バラバラに散っていた。


 私は商業施設がある方へ歩いて行く事にした。

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