うちの4番はズルい

葵羽

プロローグ

「こうへい先輩っ!お疲れ様です!」

 学年でいえば俺より1個下の女子マネージャー・大西弥月おおにしみつきは練習後いつも一番最初に、この部のキャプテンである俺にスポドリを渡しに来てくれる。


「おう!みつきいつもありがとな!」

「いえいえ!とんでもないですっ!」


 いつの日からかだろうか。

 俺にスポドリを渡しに来てくれる時の弥月は、試合のスコア係や俺以外の部員と接している時と比べると、やけに笑顔で仕草もいつもと違う気がする。「なにか違う」ということはわかるのだが、幼いころから野球ばかりしてきて「女の子」「女性」と接した経験がほぼ0といっても過言ではない俺は、弥月のいつもと違う言動の意味がこの時はまだよく分かっていなかった。

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