海月の糸

佐久良 花

海月の糸

試されることが嫌いと言う君が言葉に詰まる瞬間が好き


シロクマは魚類のように伸びやかに狭い水槽何度もターン


うらおもて「こっちが目だよ」「あれが目よ」知らんぷりして過ぎ去る魚


透明な海月の糸が絡み合い、解けては絡み、また溶けている


カラフルなアウター選ぶウミウシのツノの弾力トッポギのごと


不器用な私が君の眉毛切る これぞ母性の端くれである


涼しげに海老炒飯を食べている 元祖麻婆豆腐の店で


梅雨の朝 歯と歯ぶつかる背徳は舌と唾液の渦巻く中に


首筋にあなたの汗の滴りて 雨音流る馬車道の朝


「そういえば鎌倉だって雨だった」二人で入る折り畳み傘


折り畳み傘のカバーはなかったと言い張る君が愛おしくなる


雨男認定避けるために君 生まれた時の天気をググる


マクドをマックという君はシュッとしていて煌めいている


梅雨空の君と二人の観覧車 未来に進むための涙と


誕生日一日前の観覧車 うるうるうるる うるうるるるる


桃色の花咲いているとんぼ玉 付ければ蝶になれる気がして


二人で歩く時だけ付けるブレスレットは新しいまま


「それならさ、アンクレットにしてみれば」誰も気づかず話題にならず


歩道橋汗ばみながら登りゆき 夏空を突くタワマン眩し


それぞれの帰るところにお土産を買えば「またね」の時間となりぬ




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海月の糸 佐久良 花 @sakura_h

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