第3話 エピソード未来 3

不思議と悪趣味な夢は見なかった。

だが代わりに五月蠅い奴が騒いでいる。


糞AI『キヨミ~起きてくれよ~寂しいじゃないかあっ!』


どうやら充電器を刺して置いたら勝手に起動したらしい、私が寝る時は必ず電源は落とすのだが。


キヨミ「ボクとした事が油断したようだ」


糞AI『あっっ!!止めてええ』


プチッ…


こいつが発言して良いかは私が決める。

騒ぐ変態野郎の電源を切り、またソファーで横になった。


どうやら夕方まで寝てしまったらしい、都心部に行くはずだったが今からでは到着は深夜になってしまう。


こんな時代でも人々は夜寝る生活を変えない、そしてそれを熟知しているAIの侵略活動も活発化する。


いくら私にサバイバル能力があるとは言え、不意に囲まれてしまえばただではすまない。

回収されて脳はAI仕様に書き換えられてしまうだろう。


親父の様に…。


油断、甘さがそのまま結果に繋がるんだ。


私からすれば親父との別れは無機質なイベントで、敗者がただ去って行っただけの事でしか無い。


キヨミ「なんてな」


私は糞AIの電源を入れた。


糞AI『キヨミ~!酷いじゃないかあ…流石に怒ったぞおいら』


キヨミ「怒りついでに都市部までの情報をすぐ集めてくれ」


糞AI『え゛っ!まさか今から都市部へ行こうってのか…?それこそ強敵に服をビリビリに破られて、あられもない姿になってしまうじゃないかっ!!』


キヨミ「糞野郎に見せる体は無い。エネミーを始末したら次はおまえかもしれんぞ」


糞AI『ん…ん-んっ!キヨミは本当にやるからねええ~怖い怖い…』


キヨミ「お前は前のAIよりはマシだからまだ生かしといてやる。あくまで【まだ】なだけだ」


使えない奴は容赦なく消す。

ましてそれが組んでいる相手なら尚更だ。


糞AI『さーて、行けなくは無いが…おすすめは出来ないねえ~真面目に逝っちゃうかも』


キヨミ「お前を疑ってはいないが…どのルートもアウトか?」


糞AI『流石にちょいと有名人みたいだねキ・ヨ・ミちゃんは』


糞AI『猟奇的なファンがお一人、出待ちしてるよんっ』


ほう…。


生意気にもこの私をご指名で狙う馬鹿がいるのか。


糞AI『このAI造人間、ある程度こっちの位置を把握していて、夜外に出ようものならそっこーで〇しに襲って来るわぁありゃ~』


糞AI『ナビゲーションラグの合間にぜーんぶ脱がされちゃうかもね…むふふふふ』


キヨミ「舐めるなよ変態野郎。お前の力無しでも簡単にぶっ〇してやる」


糞AI『………』


糞AI『敢えて期待されてる突っ込みを入れないおいら……素敵…』


キヨミ「後でたっぷりと銃身と、弾丸と、アンインストールをぶち込んでやるよ」


糞AI『あぁっ!!たまらない!想像しただけでエクスタシーがぁ!!』



こいつがおすすめしないって事は相当にだるい相手って事だ。

ナビゲーターとしてのコンプラは超えて来る癖に、こう言う事だけ慎重なのが気持ち悪い。


昼間は襲って来ないのに夜、しかも外に出ると襲ってくる…か。


どう考えても暗視スコープかその類の戦術って事になる。


遠距離から撃たれたらかなり厳しい。




キヨミ「悪い。今日は止めとくわ」


糞AI『え~!それじゃおいらただ働きだよお…』


プチッ…


キヨミ「よく言うぜ」


こいつが案件を達成したらどうなるかなんてのは知らないが、少なくとも私に就いてるんだから間違いなく幸運だろ。


………。


私を狙うエネミー…。

ムカつくから今すぐ始末したい所だが、煽りに乗っかったら負けだ…。


って…そんなに私は甘くない。




シュッ…!!


外が一番静かになった瞬間、小屋から勢いよく、そして静かに飛び出す。


カサカサ……


エネミーが下品な音を立てたのを聞き逃さない。


方向だけ判れば十分だ、一気に音のする方向へ走る。


ガサガサ…!


やはり暗視か。だが【見える事】が命取りになる時もある。


武器を構える前に敵が向かって来たら退散か応戦の二択。

まして私との近距離戦は無理だと理解しているのだから、退散以外に道は無い。


ガサガサ…!!


無様な音を発する方へ銃弾を数発お見舞いした。


パァンッ……!!


パァンッ……!!


パァンッ……!!


AIが慌てるのを感じる度、サディスティックな笑みをついこぼしてしまう。


サッ…!!


追い付いた……。


瞬間、一気に銃弾を叩き込む。


油断はしない。


撃つ。


更に弾を撃ち込む。


念入りに弾を撃ち込む。


対象、生命反応無し。


エネミーを殲滅。





キヨミ「こいつらろくなモン持ってねえな。やっぱ」


私は都市部行きを強く決意しアジトに戻った。


そう言えば変態を起動しないで征伐してしまったから完全にただ働きだ。


キヨミ「ちっ…」


私を狙うだけあって少し賢いエネミーだった。普通のエネミーはあの場面で近距離戦に移行する。

あいつは私の読み通り逃げる方を取ったのでそこは褒めてやりたい所だ。


つまりはポイントが高そうな奴だったから何だかムカつくって事だ。


まあ心配されながらの戦闘は更にムカつくんだけどな。


『AIは何故人類を狙うのでしょうか……』


『共存を考える団体も出てきておりますが…』


『秩序が形成出来ない以上我々とは相容れない存在で…』


下らねえ。

この手の議論はもう何回も聴いた。どっかの放送局がぶっ潰されると、別の地域で同じ様な放送がまた始まるからだ。


〇れば良いんだよ。エネミーってのはよ。


ご指名で狙う馬鹿も始末したし今日は気持ちよく寝れそうだ。


私は念の為さっきの手法で外の様子を伺い、エネミーの気配が無い事を確認して眠りについた。


続く

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