獄門AI探偵キヨミ

@miyuki-mahiro

第1話 エピソード未来

撃つ。


更に弾を撃ち込む。


念入りに弾を撃ち込む。


対象、生命反応無し。


エネミーを殲滅。


??『う~ん…ほれぼれするねえ。敵に弾を撃ち込む君の顔…たまらないねえ…』


糞な相方の糞なトークを聞きながら、エネミーのアジトを後にした。


??『キヨミ~。怒ったのかい?茶化したのは謝るよ~。軽快なAIトークじゃないか』


キヨミ「黙れ糞AIが。ボクはイライラしているんだ、察して黙れ」


糞AI『ひどいなあ…おいらの完璧なナビゲーションと軽快なトークと絶頂のテクニカルがあってこそのコンビだろお』


糞AIがしょんぼりした様な声を出しているがこんなものはお決まりの演技だ。

本当に製作者の感性と品性と才能を疑う。下衆な下ネタしか喋らんのだからな。


キヨミ「今日は終わりか?征伐は」


糞AI『後一件あるよお。獄門の近くだからちょ~と強敵かもねえ…ひひひ。負けて服とかはだけちゃうかもねぇ』


キヨミ「何ならボクの腕ごと端末吹っ飛ばしても良いんだぜ」


私はそう言うと銃を、糞AIが宿る左腕のバンドの結合部に向けて発射した。


パァンッ……!!


糞AI『ちょっ!!あ゛!』





キヨミ「おまえの物語はこれで終わりだ」


上空に吹っ飛ぶAIバンド。


追撃しようと構えたが、丁度弾切れの様だ。

どうも案件中以外は油断してしまう。


私の前にぼとりとバンドが落ちた。


そこからかつて声だった雑音が何やら音を発している。


糞AI『こらこらこらこらこらあああ!!本当に撃つ奴があるかああああ!!もう…ケツに穴が開いちゃったじゃないかよ…』


キヨミ「ボクにかまって貰えて嬉しいんだろ?正直に言え変態」


糞AI『はあはあはあ…。うれ…しい…ですう』


正直地獄の様な日常だ。

こいつとの日々もだがそれ以上にかつて人間だったモノとの交戦は、命を賭さなければ乗り越えられない。


昔から多くの人間が予想していた通り、約束されたAIの暴走ってやつだ。


キヨミ「行くぞ糞野郎」


糞AI『はひぃ……』


~獄門付近の倉庫~


糞AI『ここだ、地下にAIが作り出した【造人間】施設がある』


倉庫に入ると規則正しく機材や何やらが並んでいる。

見ればすぐに分かる、人のテリトリーでは無いと。


糞AI『幸い色々未完成のようだねえ…キヨミの様に…ふひひ』


キヨミ「どうやらここを潰す前にやる事が出来たようだな」


私は左腕のバンドに向けて銃を発射した。


パァンッ……!!


糞AI『あひィっっ!!』


??「ぐっ!!」


ドサッ…


不用心な倉庫だ。一見しっかりしてそうだが見張りは左方向に1体のみ、確かに未完成らしい。


そして見張りの駆除は完了だ。


糞AI『ふうふう…あの…キヨミ様…?』


キヨミ「なんだ?」


糞AI『おいらを活用しての跳弾はそろそろ止めませぬか……はあはあ』


キヨミ「はあはあふうふうしながら言っても説得力は無いけどな」


糞AI『ああっ!!無慈悲!!』


地下への階段はすぐに見つかった。

見張りは武器を所持していなかったし、セキュリティの甘さが逆に不信感を増す。


キヨミ「おい糞。何か感じないのか?」


糞AI『そりゃあもう毎日…感度は良好だぞっ』


キヨミ「獄門付近のアジトにしてはセキュリティが甘すぎる」


糞AI『心配性だねえキヨミ~。このアジト、実は昨日別の奴が壊滅したアジトなのさ』


キヨミ「壊滅…?」


成程。


キヨミ「おまえもお人好しだな、他人の失敗の尻ぬぐいを受けるとは」


糞AI『むふふ…。こんな案件でも一件は一件だからねえ、まあ稼ぎながらクールダウンしてちょーだいっ』


別に案件数とか稼ぎとかに執着はしていないが、それなりにモチベーションにはなる。

こいつに上手くナビゲーションされたのは気に入らないが…。


本日最後の案件を終え、バンドの電源を切った。

案件の報告や報酬の処理は電源を切るとバックグラウンドで糞AIが勝手にやってくれる。


自分のアジトに戻りラジオを聴きながら銃の手入れをする。

この瞬間が唯一の癒しの時間かもしれない。


『AIと人類との攻防は依然熾烈を極め…』


『人類の法を無視し発生したAI人は増加の一途を…』


『暴走したAIの駆逐には同じAIで対抗を…』


毎日この話題ばかりだが退屈はしない。

AIが一番問題になるのは、その世界に法理やルールが存在しない事だ。


勝手にヒトを生み出す、意識を乗っ取る、武器を作る、人類を襲う…。

そして気が付けば世界は血に塗(まみ)れていた。


当然人類に友好的なAIも多いが、発達したプログラムは毎秒進化し時に邪悪な存在にもなる。


私からすればどうでも良い話だ。

産まれた時にはすでに世界はこんな感じだったし、銃を撃って適当に稼ぐのが仕事ってだけだ。


キヨミ「よし…」


銃の手入れが終わった。


明日の案件を確認しようかと思ったが、ここ連日銃を撃ち続けたせいか眠気が勝った。

変態野郎は午前の案件は受けないし、仮に入っていてもどうと言う事はない。





夢を見た。


いつもの夢だ。


笑顔で銃を撃つボク。


エネミーの頭が吹っ飛ぶ。


それを見て笑顔のボクはまた笑顔になる。


朽ちたエネミーを踏みつけ次のエネミーの頭を射る。





キヨミ「……悪趣味な夢だ」


糞みたいな夢は糞で中和するのが最適解だ。

私は糞AIの電源を入れた。


糞AI『おはーーーー!!!ヒャッふぉーい!!』



糞AI『おんやあ…?いつもカリカリした顔してるキヨミも、寝起きはかっわいーねええー!』


私は昨日手入れした銃を試し打ちしたくなった。


カチャ…


糞AI『ちょ…キヨみん…?朝からそん…な…ダメ…』


パァンッ……!!


糞AI『はああんっ!!』


跳弾した弾はダーツの中心部分に命中した。


キヨミ「で、ボクの寝起きが何だって…?」


糞AI『…本日も晴天、なりぃ…ガクッ』


続く

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