第2話 転生、時々チキン

三限目は言語調整。

簡単に言うと言葉を作っちゃう能力かな。と言ってもこうやって会話したり書いたりの言葉じゃなくて、未来を操作するコードの事。

これがとっても難しくて、決められた未来の入れ替えに追加で新しい未来を付け加えられるんだ。


先生「この授業は言語の習得と言うより、この能力の危険性を理解してもらう授業です。過度な能力の乱用は時に大きな歪みを生み出します」


天使が引き起こした能力事件によって、天界が消滅しそうになった事もあるって言うのは有名な話。

どの世界にもそう言う事って起きるのがとっても不思議。


今日は短縮日だったので四限と五限は無かった。

そして今日で私は天界と少し(?)お別れ。ユキとも今日でしばらく会えなくなるから、帰りにレストランでお別れ会を開いた。


ユキ「ミーナ、あっち行って泣いちゃ駄目だからね」


ミーナ「ユキこそ、ふざけたトークの相手出来る奴いなくてしょぼくれないでよね」


ユキ「ユキは大丈夫。いざとなったらそっち行くからさ笑」


まーた物騒な事言ってる笑。でも正直嬉しいね。


ミーナ「あーらら。優等生の能力乱用事案にユキ追加確定だね笑」


なんてふざけた会話をしながらディナーとデザートを食べまくった。


ミーナ「ふー!お腹いっぱい…」


ユキ「………ねえミーナ」


ミーナ「んー?もうケーキは大丈夫だよ」


ユキ「うん、そうだね笑食べ過ぎ食べ過ぎ。向こう行って着れる服無くなっちゃうんじゃない?」


ユキが言いたい事は何となくわかった。

きっと奢ってくれるつもりなんだろうけど、私が食べ過ぎてるからお金が無くなりそうだって事。


ユキ「違うわ!!笑」


ミーナ「わわわ…!!ユキってばどこまで相手の思考読めるの…もう」


ユキ「少しは天使の能力も向上してって言いたいの!ほんとに心配なんだからさ」


ミーナ「だーいじょぶだってえ~。行先は人間界の学園だよ?今とそんなにやる事も変わらないし、卒業まで居ればいいだけだもん」


ユキ「やれやれ、そんな簡単な訳無いでしょうに…」


実は人間界への転生は初めてでは無いんだよね。

前回はかなり昔だったんだけど、他の天使の能力暴走に巻き込まれて消滅しそうになった事がある。

結局意識が無かった所をユキに助けてもらった記憶。


その後もユキの長い小言を聞きながら帰宅した。

感慨深い別れなんてものは無かったけど、いつも通りが一番だよね。


お風呂に入って体を清めた後、転生の準備をする。

と言っても学園転入の準備や向こうの暮らしに関しては、先輩天使が準備してくれている。

私は転生先でうまく暮らせる様に、設定を頭に叩き込むだけだ。


ミーナ「初めまして!本条美奈(ほんじょうみな)です。趣味は食べる事!ケーキが大好きです!」


うん、上出来笑


転入先はシフォン学園と言うらしい。うーん…何だか天界にありそうなネーミング。

少しと言うか割と嫌な予感はするんだけど、気にせず学園生活満喫させてもらいますかね。


翌朝


まだ皆寝ている時間、頑張って早起きして転生ゲートにやって来た。

門番の高位天使に名前と行先を告げると、すぐにゲートは開かれ私はコード体となった。

この瞬間が結構気持ち悪い。ぐにゃっふわって感じの感覚は馴れる事はあり得ないよ。





美奈「ん………?」


???「お、目覚めたかい?」


男の声がする。

男…?ああ、そうだ人間界へ来たんだ…。


美奈「誰…?」


男「俺は黒鵜翔(くろうかける)、天界ではクロウって呼ばれてる」


美奈「そう…ありがと。早速で悪いけど出ていってくれない?」


黒鵜「おいおい…!寝起きは荒ぶるタイプか?」


美奈「ちょっと一人になりたいの、ここは私の部屋で良いんでしょ?次に来るときはちゃんとアポイント取ってから来てよね」


黒鵜「OK、わかったよ。落ち着いた頃にまた来るから」


こう見えても結構神経質。と言いたい所だけど、何となくクロウって奴の顔が気に入らなかったんだよね…。

何だかイライラするからもう一度寝よっと。


ピンポーン。ピンポーン。


何?せっかく寝付いたのに…。きっとさっきの男がまた来たんだ、面倒だなあ…。

明日来てもらうように言おう。


ガチャ


美奈「ちょっと!落ち着いた頃って五分後なの!?」


勢いよく扉を開けると、そこには見慣れた顔があった。


美奈「ユ…キ…?」


ユキ「初めまして!借名ゆき(かりなゆき)です♪」


美奈「嘘…何でユキがいるの?ゲートは通れないはずでしょ!?まさか無理矢理…」


そう言うとユキは悪戯な笑顔を見せながら一枚の紙を見せてきた。


【天使ユキを天使ミーナのボディーガードに任命する】


美奈「な、なんじゃ…これは…」


ゆき「優等生の権力、お舐めになったらあかんぜよ!!」


美奈「期待を裏切らんな…ゆきは…」


ゆき「ふふふ…宜しくね美奈さん笑」


いきなり無茶苦茶になって来たけど、どうせ人間界で過ごすなら楽しく過ごさなきゃね。

そうと決まれば…。


美奈「ではボディーガードゆき隊員!早速任務を遂行してもらう!」


ゆき「はっ!!」


美奈「ピザとジュースとチキン!そしてケーキを入手してまいれ!!」


ゆき「御意!!!」





黒鵜「様子を見に来てみれば鍵も開いてるわ、食べ散らかして寝てるわ、見知らぬ天使もいるわ。初日からぶっとんでんな……」


続く

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