第3章:変わりゆく生活
第90話:カイトの決心
ゴーレムを作り始めてから、2か月が経った。
現在、作製したゴーレムの総数は約100体。
・・・・・・うん、作りすぎたよね。
内訳は、家事等担当ゴーレムが20体、拠点警備用ゴーレムが40体、拠点外活動ゴーレムが20体、予備用ゴーレムが20体である。
模様や魔石の欠片を使い、簡単に区別できるようになっている。
家事等担当ゴーレムは文字通り、これまでレーベルが1人で行っていた、掃除や食事の用意、魔獣の解体などを担っている。
扱いとしてはレーベルの部下であり、レーベルが適宜仕事を仕込みながら、運用している。
戦闘能力は皆無で、見た目は1番最初に作製したゴーレムと同じである。
もっとも細かい修正として、手の指を長く、関節を分けておくことで、細かな作業に適応させている。
拠点警備用ゴーレムは5体1組で班を編成し、拠点の出入口5箇所に常駐し警備させているのに加えて、3組に拠点内を巡回させている。
正直、巡回は不要であるが、ゴーレムは休憩や交替が基本的に必要ないため、余ってしまったのだ。
そう、休憩や交替は不要なのだ。
ゴーレムを作製してからしばらく稼動させてみても、動きがおかしくなったり、燃料切れになったりするような素振りはなかった。
そのため、胸部の魔石設置場所を開け、魔石を確認したところ初期と同様に、濃い紫色の輝きを放っていた。
レーベル曰く、クライスの大森林は魔素が濃いため、自動的に魔力に変換し充電されているのであろうとのこと。
それに加えて、私の作製過程に無駄がなく、効率の良い構造になっているため、消費魔力も少ないのではないかと考察していた。
そのため、以前みんなで町へ行った時のように、拠点を空ける場合に備えて、予行演習として、配備しているのだ。
警備用ゴーレムは、かなり戦闘特化の作りにしてある。
魔石へ書き込む命令式の段階で、戦闘の基本的な動きを盛り込むことはもちろん、カイトやレーベルが戦闘訓練を施し、かなり強くなっている。
接敵した場合は、すぐに攻撃に移るのではなく、包囲し相手の動きを封じた上で、1体が私たちを呼びに行くように教えてある。
私たちがいない場合は、引き返すように警告した後、撃退する。
もちろん、攻撃され次第、全力で反撃するようになっている。
最近は、『竜人化』していてもオーラを隠せるようになってきたため、拠点に魔獣が出現することも増えてきた。
ファングラヴィットはもちろん、フォレストタイガーでも、5体でかかれば互角にやり合い、撃退できるようになっていた。
一方でツイバルドに対しては、有効な手段が無かった。
ツイバルドは、滞空し、地面に向かって突進、『風魔法』により攻撃してくる。
ゴーレムには上空の敵を攻撃する術が無いため、敵の攻撃を躱しながら、私たちの到着を待つしかなかった。
・・・・・・そのうち、飛ぶことのできるゴーレムとか作れないかな?
そういえば、私の翼はいつ生えてくるのだろ・・・
警備用ゴーレムは、それぞれのパーツをとにかく強固にしてあるのはもちろん、腕や脚、胴体には鎧のようなパーツを取り付けてある。
フォレストタイガーの物理攻撃や魔法攻撃、ツイバルドの突進を受けても、壊れない程度の強度は持っている。
また、フォレストタイガーの牙を加工した、剣のような武器を持たせてある。
それを使って、魔獣の息の根を止めているのだ。
・・・・・・カイトが仕込んだため、ほとんど素手で戦っているが。
拠点外活動ゴーレムの役割は3つある。
1つ目は、『アマジュの実』や『シェンの実』を収穫することだ。
特定の場所にある木の実を収穫するという仕事は、ゴーレムにやらせるのにとても適している仕事だった。
・・・・・・一度連れて行き、収穫して見せればいいだけだからね。
2つ目は、マーラたちの護衛だ。
マーラたちの日々の運動や食事において、拠点は狭すぎる。
妊娠しているポスとベッカを除き、毎日マーラたちを拠点の外へ連れていくのだが、それが結構大変だった。
そこで、ゴーレムの出番である。
予め何通りかのコースを用意しておき、日替わりでそのコースを散歩させながら、食事をさせていく。
拠点外活動ゴーレムは、警備用ゴーレムと同じ強さを誇っているため、途中で魔獣に襲われても撃退できる。
そして3つ目が、狩りだ。
私たちが行くときはその手伝いや、荷運びを。ゴーレムたちだけに任せることもある。
最後の予備のゴーレムたち。
身体の作りや魔石へ書き込んだ命令式、戦闘訓練を施した点は、警備用ゴーレムと同じだ。
現状、使い道が無いため、戦闘能力を身に付けさせた後、家のある岩山に新たに作った部屋にて待機させている。
巡回が多すぎても邪魔だし、待機を命じてもゴーレムは疲れることもない。
そのため、不測の事態に備えて、予備戦力として確保してあるのだ。
ゴーレムに多くの仕事を任せるに至ったのには理由がある。
カイトが近々、拠点を出ることになったのだ。
これはカイトからの申し出であり、冒険者としてラシアール王国や近隣国家を旅してみたいとのことだった。
カイトのこの申し出は、ある程度予測していた。
私は現状の生活に満足しているが、カイトやポーラがずっとここにいるものだとは、思っていない。
もちろん一緒にいられたら嬉しいが、2人がやりたいこと、目指したいことを見つけた場合には、最大限にサポートし、笑顔で送り出してあげようと思っていたのだ。
カイトは実家が陰謀に巻き込まれて以来、1人でポーラを守りながら懸命に生きてきた。
そして私たちと暮らすようになり、安定した生活を手に入れた。
ポーラのことも、私やレーベルが守ってあげられる。
・・・・・・ポーラ自身もかなり強くなっているが。
カイトは以前から、いろいろな場所へ行ってみたい、旅をしてみたいと話しており、ポーラの安全が確保されていることから、言い出すのではないかと予測していたのだ。
もっとも、カイトの旅立ちに際し、私やレーベルからいくつか条件を出した。
戦闘能力のさらなる向上、サバイバル知識の習得など、カイトが1人で生活していくにあたって必要と思われる内容だ。
正直、過保護な面があるのも否定できないが、簡単に死んでしまうこの世界において、強くなったとはいえ、カイトを1人で送り出すことは不安もあるのだ。
カイトも受け入れ、もう少し訓練を積んでから旅立つこととしている。
カイトとレーベルはこれまで以上に戦闘訓練を行い、またサバイバル技術の習得に勤しんでいる。
ポーラはカイトがこれまでやっていた仕事をしたり、私の右腕として活躍すべく、シャロンとの連携も含めて特訓したりしている。
私は、ゴーレムの研究に没頭しており、今は出入口を担えるようなゴーレムの開発に取り組んでいる。
そうしたわけで、家事や狩りなんかを、量産したゴーレムに任せているのだ。
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