第76話:王国の話2(※公開直後に辻褄が合わない部分を削除しました)
「バイズ辺境伯領は、ラシアール王国とクライスの大森林の接する全ての場所を、その領地とする。そうすると当然、森から出てくる魔獣や魔物に対処することが、最大の役目となるわけだ。コトハ殿には定期的に情報、具体的には森の中で魔獣や魔物の移動が起きていたり、強い魔獣が住み着いたりした場合の連絡を頼みたい。加えて、可能であれば森の外へ出てきた魔獣の対処 —討伐に協力をお願いしたい・・・」
「情報は分かったわ。これまでよりも、注意して確認するようにする。・・・でも討伐の協力はねー・・・。ぶっちゃけ、どの程度の魔獣なら倒せるの?」
「・・・そうだな。ファングラヴィットであれば、なんとかなる。もっとも、ある程度の犠牲は覚悟の上ではあるがな。だがフォレストタイガーは無理だ。あれが森の外に来れば、町へ来ずに森へ帰ることを期待するしかないな・・・」
「・・・・・・なるほどねー。いや、別にさ、フォレストタイガーを代わりに倒してくれって頼みを今されて、場所も教えてくれたら倒すのは構わないのよね。でも、森まで伝えに来るのは無理だろうし、私も森を出るのは多くても2週間に1回の頻度だからなぁー」
「ああ、分かっておる。なので、これは可能な限りの協力をお願いしたいだけだ。加えて、森の出口付近で、森から出そうな魔獣を見かけたらできるだけ倒しておいてほしいくらいだな・・・」
「オッケー。どっちもできる限りは協力するよ。せっかく仲良くなれたんだしね」
仲良く・・・・・・、まあバイズ辺境伯のことはある程度信用しているし、困っているのなら助けてもいいとは思っている。
まあ一番は、せっかく得られた“”強い者“との繋がりを、維持しておくことが、私たちにとって有用ってわけだけどね・・・
「次にロップス殿下だが、こちらは責任を問われない。まあ、王族であるし亡くなった者を悪く言うようなことはできなかった。殿下は、『元レンロー侯爵に騙され、遠征に担ぎ出されて亡くなった』という扱いになる」
「・・・まあ、あれでも王子だもんね。私は目の前で死ぬのを見てるし、それで満足だよ」
「申し訳ない。マーシャグ子爵家の汚名をそそぐ件についても、殿下を話に入れることはやはり難しそうだ。レンロー侯爵の悪事の1つとして、証拠が集まり次第、公表するつもりだ・・・」
「分かった。まあもとから無茶を言うつもりは無いし、あなたができる限りのことをしてくれてるのは分かってるから、気にしないでね」
「そう言ってもらえると助かるよ・・・」
これは本心だ。
拠点を出てから3週間弱しか経っていないのに、あの時の約束をきちんと果たそうとしてくれているし、その道筋も見えてきている。
そりゃあ、王子の悪事もバラすことができれば気持ちがいいけど、腐っても王子の悪行を、死後に広めるのは難しいだろう。
どうやら、父親である国王には溺愛されていたらしいしね・・・
「それと、コトハ殿に紹介してもらった、レイルとキエラの2人だが、確かに有用な情報を多く持っており、マーシャグ子爵家の汚名をそそぐためであれば、と喜んで協力してくれた。それから、その調査能力を買って、他領や国外の情報収集要員として雇うことにした」
「そっか。元々、貴族の不正とかを調べていたみたいだし、適任だよね」
「ああ。今後、コトハ殿に提供する情報の出所の1つだな」
ああ、それもあるのか。
私が知っている人が情報の出所なら、私も信用しやすいし、最悪、自分で裏を取ることもできる。
バイズ辺境伯は、私が思っていたよりも、私との情報交換を重要視しているんだね・・・
「元々伝えるつもりであったのは、以上だ。だが、先程新たに伝えたいというか、聞きたいことが増えてな・・・」
「何?」
「・・・うむ。コトハ殿が連れてきたスレイドホース。あれは元々、ラシアール王国軍の軍馬で間違いないか?」
おーっと、いきなり・・・
この言い方をするってことは、確信しているんだよね。
でも、わざわざ機嫌を損ねに来ることはないだろうから・・・
「そうだよ。森の中で見つけて、拠点に連れ帰ったの。ダメだった?」
「いや、そうではない。戦地に連れて行った軍馬が死亡したり、逃げ出したり、奪われたりといったことはよく起こることであるし、逃げていった馬を捕まえ世話をした者がいれば、その人の馬となるのが、一般的だ」
「そっか。返せ!って言われるのかと思ったよ・・・」
「まあ、そう言ってくるヤツもいるではあろうがな。だが、あのスレイドホースはコトハ殿の“従魔”であろう?」
・・・・・・え?
なんで、知ってるの?
従魔ってことはあえて言わずにおいたのに・・・
驚いて、自然と警戒する姿勢を取っていた。
「すまん。驚かせる気も警戒させる気も無かったのだ。先程、屋敷の入り口で、コトハ殿とスレイドホースが一緒にいるところを見たときに、似た魔力を感じたのでな。その感覚が、以前従魔契約に成功した者を雇った際に、その者と従魔との間に感じた感覚と似ておったので、もしやと思ってな・・・」
「・・・・・・魔力を感じた? ・・・・・・あなたは『人間』じゃないの?」
「『人間』であっても、多少は魔力や魔法の扱いに長けた者もおるよ。・・・だが、私は『人間』と『魔族』のハーフだからな。ある程度の魔力は感知できる」
・・・・・・・・・・・・えええー!?
『人間』と『魔族』のハーフ!?
「・・・そう、なんだ。ごめん、驚きすぎて・・・」
「ふっふ。一本取れたようだな。私の母は『魔族』なのだよ。ラシアール王国はダーバルド帝国なんかとは異なり、『魔族』や『エルフ』など『人間』以外の人型種であっても扱いが変わらんからな。一部、ダーバルド帝国の考え方に同調するバカな貴族もおったが、幸い此度の遠征で軒並み死に絶えたわ」
「・・・そうなんだ。じゃあ、他にもハーフの貴族はたくさんいるの?」
「いる、とは思う。だがこれまではバカな貴族がある程度はいたせいで、公にする者は少なくてな。本当のところは分からぬ」
「そっか。・・・でも、バカがいなくなったのは良かったね」
「ああ」
『魔族』の血を引いているから、『適合化の魔法陣』で私の魔力に適合しているマーラから、私の魔力と似たものを感じることができたってわけね・・・
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