第73話:ポーラの可能性
レーベルの説明で、従魔契約の仕組みや、あの謎だった魔法陣、『適合化の魔法陣』についても理解できた。
ただ・・・・・・
「仕組みは分かったんだけどさ。なんで私はその、『適合化の魔法陣』を使えたの」
そう、それが謎だ。
これまで使ってきた魔法は、私のイメージを具現化したものだが、どれもイメージした有体物を作り出したり、作り出した塊を撃ち放ったり簡単なものだった。
イメージしやすい、前世にもあったようなものを作ったり、撃ったりしただけだ。
それに比べて、『適合化の魔法陣』はかなり抽象的というか目に見えない身体構成などに干渉するもので、当然前世には存在しない。
そのため、この先使うならともかく、これまで使えた理由が分からない。
「それはおそらく、龍族の本能、ではないかと」
「・・・・・・本能?」
「はい。私のお仕えしていた龍族の皆様は、数多くの従魔や眷属を従えていました。これは特殊なことではなく、龍族は生きとし生けるものの頂点に君臨していた存在です。そのため本能的に多くの配下を従え、また魔獣や魔物も従おうとするのです。コトハ様には龍族の血が流れております。そのためコトハ様のリン殿やマーラ殿たちを従魔にしたいという感情が本能的な部分を刺激し、『適合化の魔法陣』の発動に至ったのではないかと、愚考致します」
なるほど。
確かに、リンのときもマーラたちのときも、従魔にしたい —リンのときはペットにしたい、だが— と考えていた。
・・・にしても本能って。
それから、リンやマーラたちと意思疎通が図れるのも、従魔契約のおかげらしい。
魔力が繋がったことで、それを介して意思が読み取れるとのこと。
・・・でもさ、そうするとカイトやポーラが、リンやマーラたちの意思を理解しているのは?
疑問に思いそう聞くと、
「・・・・・・これも、なんとも不思議な出来事なのですが、カイト様やポーラ様とコトハ様の間にも、魔力の繋がりが芽生えております。そのためコトハ様の魔力を介して、というか互いに有するコトハ様の魔力へ適合している箇所を通して、意思疎通が図れているのだと思われます」
「・・・・・・ん? 私とカイトやポーラの間に魔力の繋がりがあるの? 従魔契約なんかしてないよ!?」
「いえ、従魔になっているわけではありません。そもそも『人間』など人型種や『悪魔族』はなぜか従魔となれませんので。おそらくお二人は、身体が成長する時期にコトハ様のオーラを浴び続けている影響で、自然とコトハ様の魔力へ適合していき、魔力の繋がりが生まれたのだと思われます。それを認識できるようになったのは最近ですが、以前話したお二人の魔素への親和性が向上しているのは、『アマジュの実』に加えて、そのことも理由であったのだと思われます」
かなり驚いたが、何か不具合があるわけではないらしい。
むしろ強くなりやすいとのことで、2人は喜んでいた。
ちなみにレーベルは、既に身体が出来上がっていること、元々魔素への親和性が高いことから、私との魔力の繋がりは形成されていない。
もっとも、『悪魔族』は魔力の感知に長けているので、リンやマーラたちの意思は理解できるそうだ。
いろいろ説明してもらった最後に、『闇魔法』についても聞いてみた。
詳しい説明を聞くつもりはないが、概要だけでも聞いておかないと、習得するのは困難に思えたのだ。
「そうですね・・・。『闇魔法』は、『火魔法』などそれ以外の魔法を除いた総体、と表現するのが正しいでしょうか。『闇魔法』に分類される魔法の多くは、古代に多く使われ、現在では廃れたものです。従魔契約や『適合化の魔法陣』もその1つですね」
はい?
残り物の詰め合わせってこと?
いや、確かに、リンを従魔にした後に『闇魔法』のレベルが上がっていたけどさ・・・
でも、ポーラは最初から『闇魔法』のレベル0が備わっていたけど?
残り物の詰め合わせに適性があるってどういうこと?
「それについては推測の域を出ませんが、ポーラ様にも従魔契約や『適合化の魔法陣』に対する適性が備わっているということではないかと。『闇魔法』に分類される代表的な魔法は、従魔契約に関するものとゴーレムなどの魔法生物の生成に関するものですから」
ポーラに従魔契約を使える可能性があると聞くと、ポーラは大喜びし、カイトは分かりやすく落ち込んでいた。
やっぱ、魔法についてはポーラが秀でているみたいだ。
それにしても、ゴーレム生成か。やってみたいな・・・
「つまり、『闇魔法』自体を使おうとすることは抽象的すぎてて、従魔契約やゴーレム作るみたいな、個別の魔法を使えるように試すことが必要ってわけね・・・」
「左様でございます」
久しぶりに新たな知識が目白押しで、少し整理に時間が掛かったが、大変勉強になった。
そしてポーラが、既にどんな魔獣を従魔にするか考え出しているので、そのうちポーラの従魔探しの旅に出る必要がありそうだった。
とりあえず、そろそろ日も暮れてくる頃なので、レーベルに夕食の支度を任せて、マーラたちを連れて森へ入った。
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