第34話:今度こそ探索しよう
一夜明けて、再び、森の探索に向かう。
方角は昨日と同じく、西。
昨日は、途中から、オーラの実験がメインになっていて、条件を変えながら、魔獣に襲われるのを待っていたので、あまり探索ができなかったのだ。
というわけで、リンと2人で西側へと向かう。
カイトは『身体強化』を使った際の、動きの精度向上と攻撃のバリエーションを増やすことを、ポーラは主な攻撃手段である『アイスバレット』の威力と命中率の向上を目指して、特訓している。
昨日帰ってから、それぞれ成果を見せてくれたが、素人の私にも分かるくらいに、成長していた。
・・・2人とも、やはりすごい。
そういえば、カイトに、これ以上、獲物のストックが増えても食べきれないから、危険なときと、珍しいものを見つけたとき以外は狩らないように言われた。
まあ、無意味に殺生する気も無いし、腐っても困る。
・・・ただ、あんなに何度も念を押さなくてもいいのに。最後はリンにまで注意して、私を見張るようにお願いしてたし・・・
気を取り直して、拠点入り口を出て、西側へと入っていく。
格好は、昨日考えた、森の探索スタイルだ。
新しい魔獣や魔物を見つけるのが目的だから、オーラを隠す必要がある。
ただ、そうすると出てくるのは、よく見るウサギや虎なわけで・・・・・・
倒さずに、回避していくというのもなかなか難しい。
まず、こちらが先に発見した場合は、進路を変更すれば、まあ、逃げられる。
困るのは、向こうに先に見つかった場合だ。このパターンは虎に多い。
オーラを解放したら逃げていくのでは?と思い、オーラを解放した。
当然、目の前の虎は一目散に逃げていった。
・・・なんか、本当に魔獣になった気分。
ただ、問題はここからだった。
オーラを解放したことで、目の前の虎以外にも、周囲の魔獣が逃げてしまったようで、1時間ほど、魔獣を探して彷徨う羽目になった。
・・・もう少し、限定的に、目の前だけにオーラを解放できないもんかな。
そんな風に、カイトに課された、「必要以上の狩猟禁止」が重くのしかかりながら、森の探索を続けた。
いや、カイトの言ってることは全面的に正しいんだけどね? 狩り尽くしても困るし・・・
♢ ♢ ♢
森を探索し始めて、2時間ほどが経過した頃、いきなりパリン!っという、『自動防御』が発動した際の音が、頭上から鳴り響いた。
慌てて上を見上げると、この世界に来て最初に見た鳥、首の2つある、あの鳥が私めがけて突っ込んできたようだった。鳥は『自動防御』に阻まれ、上空へ戻っている。
「っ!」
私はすぐに、『竜人化』をフル発動し、『身体装甲』によるローブを消した。
動きやすさを重視した、戦闘スタイルだ。
鳥の2回目の攻撃も、『自動防御』により防ぐことができたが、鳥の攻撃はそれで、終わらなかった。
再度上昇し、距離を取ると、私のいる周辺の地面めがけて、強く羽ばたき始めた。
すると、なにか、刃のようなものが飛んできたかと思うと、次々と周りの木が切り裂かれ、折れていき、欠片が飛んでくる。
「痛っ! これ防げないの!?」
刃自体は、『自動防御』により防御されるが、飛ばされてきた木の欠片は、なぜか『自動防御』で防がれず、身体に相次いで当たっていく。
ダメージはなさそうだが、痛いのは痛い。
私はすぐに、自分の周りに『ストーンウォール』を発動し、木の欠片をやり過ごす。
そうしていると、『ストーンウォール』が設置されて無い場所、つまり頭上から再度、鳥が2つの首を揃え、くちばしを突き出して急降下し、攻撃を仕掛けてきた。
それを見ると同時に私は、脚に力を込めて、空中に跳び上がり、鳥の背後をとった。
そしてそのまま、一回転して、鳥の胴体めがけて、脚を振り下ろした。
空中前転回転蹴りである。
私の蹴りは、鳥の胴体、2つの首の付け根辺りに命中し、鳥を地面へと叩き落とした。
これで終わりかと思ったが、鳥は再度、翼を広げて飛び上がろうとしている。
私は、着地と同時に、『竜人化』させた手を前に突き出し、力を込める。
角のある頭部から、全身を何かが駆け巡っていくような、そんな感じだ。
そしてそのまま、手に力を込めて、最大火力で『ストーンバレット』を鳥めがけて打ち込んだ。
♢ ♢ ♢
鳥に命中し貫通した石弾は、そのまま、後ろの木を何本も吹き飛ばして、爆散した。
・・・今、空中からは、土や小さな石、粉々になった木の枝や葉、そして粉々になった鳥の肉片が降ってきている。
「・・・・・・やり過ぎた。やっぱ、『竜人化』して使う魔法の威力はすごいな・・・」
少し時間が経って、視界が晴れると、一帯が森から平原に変わっていた。
そしてその入り口辺りに、右側の首と、右半身を失った、鳥の死体が転がっていた。
・・・・・・確実に、オーバーキルだ。またやったのか。
はぁー・・・
やってしまったものは仕方がないので、鳥に近づき一応死んでいることを確認する。
首が2つあるのだから、片方の首がやられても、生きているかもしれない。
もっとも、首どころか身体を半分失っているのだから、生きているわけないと思うが・・・
予想通り死んでいたので、鳥を『鑑定』する。
♢ ♢ ♢
『ツイバルド』
2つの首を持つ亜竜。
2つの首はそれぞれ独立した意思を有し、片方の首が潰れても、行動することができる。
魔法を巧みに操る。
♢ ♢ ♢
・・・・・・なるほど。
亜竜ときたか。鳥ではなくて、竜。つまりドラゴンの一種?
ドラゴンならなんで、私の龍のオーラに気づかないのよ・・・
まあ、新しい魔獣を倒したのだから、いいことにするか。
っていうか、亜竜は魔獣じゃないのか。
これまで、魔獣を『鑑定』したら、魔獣って書かれてたよね。
確か、魔獣と魔物の区別は曖昧なところがあるって言ってたし、『鑑定』も何らかの基準で区別しているのだろう。
そして、その基準では、魔獣にも魔物にも該当しなかったから、書かれなかったのかな?
とりあえず、私の足下で小さくなっているリンに、ツイバルドを回収してもらおう。
・・・・・・・・・ん? リン、小さくない?
怖がって震えている感じを比喩的に、「小さくなっている」って表現したつもりだったけど、物理的に小さくなってない!?
「リン!? 大丈夫? まさか、攻撃が当たって削れちゃったとか!?」
そう焦りながら、リンに聞くと、いつもの感じで「大丈夫−」と伝えてきた。
なら、いいんだけど・・・・・・
少しリンと会話した結果、リンの『形態変化』というスキルらしい。
ある程度の範囲 —こぶし大から、自動車くらいのサイズの間— で、大きさを変えることができるらしい。
そういえば、これまでも、ブラッケラーと戦っているときとか、リンのことを気にできていなかったけど、こうやって、攻撃を避けていたんだ・・・
というか、戦闘に夢中になる前に、仲間のこと考えないとなぁー。
これじゃ、いつまで経ってもカイト達と探索できないし、いつかリンに怪我をさせてしまうかもしれない。
そう反省しながら、リンにツイバルドを回収してもらい、家に帰ることにした。
ツイバルドについてカイトやレーベルに聞きたいし。
・・・というか、辺り一面、ツイバルドの魔法と、私の魔法で吹き飛んでいて、生き物なんて居やしない。
そういえば、ツイバルドが使った魔法。
羽ばたいたかと思ったら、なんか刃みたいなものが飛んできていたような・・・
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