第31話:いろいろ聞いてみよう

レーベルを執事として雇うことになった。

なんか、流されたような気もするが、一度言った言葉には責任を持たなくては・・・

にしても、執事かぁー

私の執事のイメージは、使用人のまとめ役みたいな立ち位置で、他の使用人に指示を出していたり、あとは主人の仕事を手伝ったり、とか?

レーベルはなにができるんだろう・・・。とりあえず、多分めちゃくちゃ強い。それだけは、感覚で分かる。

・・・・・・・・・感覚で強さが分かるって、野生動物味が増してきたな。


見た目は、若い男性、20代前半に見える。黒い執事服?をピシッときていて、とても似合っている。顔もイケメンだし、スタイルもいい。私の執事でなければ、間違いなくモテる。

それに、さっき『悪魔族』って言ってたっけ?

悪魔って所謂あれだよね?召喚の魔法陣みたいなので、召喚して、対価と引換にお願いを叶えてもらうみたいな。レーベルも、さっき、召喚に応じてって言ってたし・・・

それに名前も。なんかレーベルって名乗るとか言ってたけど、もっと長い名前あったよね?



ダメだ。聞きたいことが山ほどある。

本当は、いつも通り後回しにしたいけど、これから私に仕えてくれるんだし、聞いておいた方がいいかもな。

拠点まで、まだ距離はあるし、聞けることだけでも聞いてしまうか・・・


「ねぇ、レーベル?」

「はい。いかがなさいましたか?」


やっぱ敬語使われるのは慣れないな・・・


「いろいろ聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「もちろんでございます」

「まずさ、レーベルって呼んでるけど、ちゃんと名前あったでしょ? 変えちゃっていいの?」

「はい。『悪魔族』の真名は基本的に長いのです。これは、昔、お仕えしていた龍族に名付けていただいたものだからです。というのも、龍族の皆様は、なぜか長い名前を好まれる傾向にありまして・・・。そのため、私たちに名前を付けていただいたときも、自然と長い名前となりました。ですが、生活において、長い名前は、正直に申し上げると、不便です。なので、通常は省略しています。今回は、その省略した名前を、コトハ様に名付けていただいたので、大変嬉しく思っております。ですので、今後はレーベルと、名乗らせていただきたく思います」

「・・・そっか。納得しているのならいいの」

「ありがとうございます」

「それで、『悪魔族』っていう種族なの?」

「左様でございます。といっても、『人間』や『魔族』などの、人類とあまり違いはございません。普通に食事もしますし、睡眠もとります。ただ、魔素適応度も高いので、魔素が豊富な地域では必要量は、少ないですが」


なるほど・・・

にしても、魔素適応度ってどこかで聞いた気がするな。

まあ、いいや。次だ、次。


「それでさ、レーベルは執事になってくれるってことだけど、どんなことができるの?」

「それはもう、執事に求められることは全てでございます!」

「・・・全て?」

「はい! 料理、洗濯、掃除等の身の回りのお世話はもちろん、財務処理や貿易の管理、暗殺や戦闘まで、何なりとお申し付けください!」



・・・・・・・・・はい?

後半、なんて言った?



「財務処理? 暗殺? そんなの執事の仕事なの?」

「はい。家業のお手伝いをするのも、執事の務めでございます。それに主を狙う不届き者や、敵対者を内密に始末するのもまた、重要な役目でございます。とはいえ、コトハ様を害せる者などそうはいないでしょうが」

「・・・・・・とりあえず、料理とかをお願い。とはいっても、肉を焼くぐらいしかないけど・・・」

「選択肢が少ないからこそ、腕の見せ所でございますので、ご安心ください」


ほんと、前向きだな・・・


「そう・・・。それと服が作れたりしない? カイト達、一緒に住んでいる子たち服が限界なのよね・・・」

「裁縫の心得はございますが、材料の調達が難しいですね。この森だと、布とできるような材料は採れませんので・・・」

「やっぱり、そうなのよね−」

「コトハ様同様に、『身体装甲』のスキルを覚えてみてはいかがでしょうか」

「そりゃ、覚えられたら便利だけど・・・。スキルって覚えようとして覚えられるものなの?」

「はい。スキルは元々、魔法が高度に体系化されたものでございます。ですので、狙って習得することも可能でございます。『身体装甲』であれば、コトハ様がお使いになるのを、見せ、使おうとしていれば、習得は可能かと思います」

「・・・なるほど。帰ったら、教えてみるか」

「はい」

「レーベルは、いろいろ知っててすごいわね」

「お褒めに与り光栄です。ですが、大変失礼ながら、魔法やスキルに関しては、あまり、私には聞かない方がよいと思います」

「どうして?」

「魔法やスキルの習得は、その人自身の形成に関わります。なので、できるだけ自分で努力して、試行錯誤を重ねて習得することが望ましいのです。私は、長い年月を生きて参りました。そのため、多くの魔法やスキルについての知識がございます。やろうと思えば、スキル等を簡単に習得させることができると思います。ですが、私に聞いていて習得することを繰り返せば、それは真に、自己の力として、ご自身を助けることには繋がらないのです。私を召喚した者の中には、強力な魔法やスキルの教授を求める者も多数おりました。召喚され、対価があれば教えましたが、それが真にその者らの力となったかは、分かりません。龍族の血を引き、無数の可能性を有するコトハ様には、是非、自らの手で、力を掴み取っていただきたいのです」


なるほどね。

考えてみれば、その通りだ。自分で努力して、失敗を繰り返して獲得したものと、人から与えられたものでは、その価値は異なる。

『ストーンバレット』だって、『竜人化』だって、きっかけはともかく、自分でいろいろ試して身につけた、大切な力だ。誰かに教わったわけじゃない。

カイト達の魔法やスキルも、きっかけは与えたけど、自分達で練習して身につけている。

それに、何でも人に教わっていては楽しくないしね!

この世界に来て、いろいろ考察しながら試すのを、楽しんでいるのだ。

せっかくの第二の人生なんだし、楽しんでやらないとね!



「わかったわ。ありがと、レーベル」

「いえ、出過ぎたことを申しまして、お詫び致します。それに、もちろん、危険が迫っている時などは、お手伝いさせていただきます。それまでは、ただの執事として、お仕えさせていただきたく存じます」

「・・・ええ。改めてよろしくね、レーベル」



レーベルは、最初の印象よりも大分、まともみたいだ。

私のことを少し敬いすぎている気はするけど。

とりあえず、帰ったらカイト達に、『身体装甲』の練習をさせてみようかな・・・

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