第24話:拠点を作ろう2

まずは、岩山・洞窟の改造から始めよう。


洞窟の一番奥の壁に向かって、『土魔法』を発動する。

カイトには、形を整えたり、補強をしたりと、細かい作業をお願いし、大幅に形を変える作業は、私が担当する。

『土魔法』が使えないポーラには、邪魔な土を、1カ所に集めておいてもらう。後でまとめて捨てに行こう。


天井は、そこまでの高さは必要ではないし、あまり穴を大きくしすぎると、洞窟の強度が心配になる。なので2メートルほどにしておく。少し狭く感じるが、生き埋めになるよりはマシだ。

とにかく、壁や天井には、「硬く、硬く」と強く念じて、強度を上げておく。


穴は、これまで生活していた場所から、奥へ20メートルほど。

通路を作り、左右に、カイトとポーラの部屋を作る。部屋といっても、通路とした中心から、横に3畳ほどの横穴を掘って、『土魔法』で入り口を半分ほど塞いだだけだ。

部屋といえるかは微妙だが、2人が喜んでいたから良しとしておこう。

ちなみに、カイトもポーラも、引き続き3人で寝ることを望んだので、拡張した通路の奥に、私用のスペースと、3人が寝るためのベッドを設置した部屋を作った。


洞窟奥の拡張は、比較的簡単に終わった。

洞窟の奥へは、外からの光など入っては来ないので、ポーラと2人で、『光魔法』で明かりを設置していく。

私は、継続して光り続ける電球なんかをイメージできるので、設置した明かりの継続時間も長いが、ポーラがイメージできるのは太陽だけだ。そのため、ポーラが設置した明かりは、数時間経つと消えてしまう。

なので、完全に真っ暗にはならないように、私が、通路の中心や、部屋の真ん中などに大きめの明かりを設置し、ポーラが細かいところに明かりを設置していく。

これなら、全部私がやった方が簡単な気もしたが、ポーラも自分でやりたがったし、何でもやってしまっては、ポーラの成長にならない。


それに、やり続けていけば、ポーラの設置する明かりも継続時間が延びるだろう。

さらに、魔法は使えば使うほど、レベルが上がっていく。

魔法のレベルは、3までは新たにできることが増えていたが、4以降は、『鑑定』しても、新たにできるようになったことはなかった。

確かに、レベル3でできること以上に、なにかできるようになるとは思えないな・・・

もっとも、レベルが4や5になることで、発動する魔法の強度や精度は、格段に向上していた。

どうやら、レベル4以降は、習熟度が増していくらしい。



洞窟の奥への拡張が完了したら、次は地下 ―洞窟が地上10メートル付近の岩山にあるから、地下といえるのか微妙だが— に、食料庫と宝物庫を作っていく。

・・・別にお宝があるわけではないが、洞窟内に、大切なものを保管するのであるから、宝物庫と呼びたくなって、勝手に、そう呼んでいる。

作り方は簡単で、さっきと同じく、地面から土を『土魔法』で運び出して、斜めに穴を掘っていく。

数メートル、斜めに穴を掘ったら、そこに、直方体の空間を作っていく。

大体、高さ2メートル、横幅が4メートル、奥行き10メートルほどだ。

先程と同様に、壁は強く、固めておく。


空間ができたら、それぞれの壁に、『水魔法』で氷の板を作り出して、設置していく。

入り口は土魔法で塞ぎ、斜めに掘った穴は、階段にしておき、出入りをしやすくする。

本当は、ドアを作りたかったが、ドアを作る技術など無いので諦めた。

少し手間だが、冷蔵室の入り口を塞ぐ必要性は高いので、毎回『土魔法』で入り口を塞ぐことにする。

この後、同じように宝物庫も作った。こちらは、氷を設置はしないが、宝物庫らしく、入り口は塞いでおく。

食料庫の氷の板の前と、宝物庫の壁際には、カイトが『土魔法』で棚を作ってくれた。

ここに、食料や、魔石なんかを置いていく。


食料庫と宝物庫は、これまで生活していた洞窟の奥のスペースに入り口を作った。

これからこのスペースは、日中の生活場所として使う、所謂リビングになる予定で、いろんな作業をするための場所にする予定だ。

といっても、魔獣の解体は匂いが気になるので、洞窟の外でする予定だし、『セルの実』から塩を作るのも、火を使って熱する必要があるので、煙を出すためにも外でやる。

なので、あまり、使い道は思いつかない。食事くらいかな?


本当は、食料の用意以外にも、生活向上のための小物を作ったり、カイトにこの世界のことについて教わったりしたい。ポーラにも勉強させてあげたいと思っている。

だが、残念ながら、まだそこまでの余裕はない。

今回の拠点作りを終えたら、服の材料や、金属製品を作るための鉱石なんかを求めて、遠出をしてみてもいいかもしれない。

2人を食料調達業務から完全に解放できるようにするのが、今の1つの目標だった。



その他にも、せっかくの機会なので、洞窟の入り口から、リビングまでの道も、地面を整えたり、壁を補強したりしていく。

洞窟の入り口は、結構大きく、大きな魔獣が入ってこないとも限らない。

それに、まだちゃんと見たことはないが、この森の上空は、でかい鳥 —最初に見た首が2本あるヤツ以外にもいろんな種類の鳥がいるみたい— が飛んでいる。

それらの鳥が、入り口前の広場に下りてきて、洞窟の中を探ってくることも考え、洞窟の入り口は、私たちが通るスペース以外は、硬めの壁を作って塞いでおく。

私たちの通るスペースは、出入りのたびに、『土魔法』で作ることにした。

面倒だが、安全のためだ。



こうしている内に、日が沈み始めていた。

今日の作業はここまでだ。

一日で洞窟の内部の工事が完了したと思うと、順調だろう。


カイトやポーラは、自分の部屋に、お気に入りのものを飾っていた。

カイトは、フォレストタイガーの牙を飾っていた。

ポーラは、自分がこれまで倒した、ファングラヴィットの魔石を飾っている。

部屋を気に入ってくれてなによりだ。



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