第23話:拠点を作ろう1

『竜人化』の実験をした翌日、ここまで3週間弱生活してきた洞窟や、その周辺を、私たちの拠点として改造することにした。

昨日、カイト達と一緒に、いろいろ案を考えたのだ。


1つ目は、洞窟のある岩山、ここを中心に、拠点を構えることだ。

拠点に組み込みたいのは3箇所。

『アマジュ』の群生地や、洞窟の入り口の反対側にある、『セル』の群生地、それから川岸近くに生えている『シェン』だ。

この3つは、 —カイトにとっては2つだが— 私たちの生命線ともいえる。


『アマジュの実』は食材としてはもちろん、薬としての役割もある。

いつ何時、一昨日のように怪我をするかも分からないので、確実に確保しておく必要がある。

それに、カイト曰く、『アマジュの実』は伝説の木の実らしい。

今のところ、森の外に出る気も、森の外の人間と接触する気もないが、可能性を考えたら、『アマジュの実』を確保しておく重要性は高い。


そして、『セルの実』。私が狩りに出ている間に、カイトとポーラには、『セルの実』から塩を作り続けてもらった。

そのため、現在、塩は多くのストックがある。とはいえ、生きていくのに必要不可欠と思われる、塩の入手ルートは重要だ。


最後に、『シェンの実』。辛みを付ける調味料として使ってるため、消費量はそこまで多くないし、木の実1つから作れる、ペースト状の調味料はかなり多い。それに生きていくのに必要不可欠というわけでもない。

とはいえ、辛みを付けたファングラヴィットの肉は絶品だし、正直、今更この味を手放すことはできない。


そう考えると、3つの実が採れる場所は、全て拠点に組み込みたい。

しかし、『アマジュ』の群生地は、岩山から私の足で、5分ほど。500メートルほどの距離だし、『セル』の群生地は、洞窟の入り口から、岩山の崖に沿って、反対側へ同じく5分ほどだ。

それに対して、『シェン』は、川岸近くに生えているので、岩山から15分ほどかかる距離で、少し離れている。

それに川には、多くの魔獣がやってくる。

あまり拠点を広く構えすぎて、魔獣に入り込まれても困る。


・・・うーん、やはり最初は、『アマジュ』と『セル』の群生地までにしておくか。

『シェンの実』は1人で回収しに行けばいいし、それほど数も必要ではない。

試しに今度、種を植えて育ててみてもいい。


そう、この拠点形成の目的の1つは、カイトとポーラが2人で森に出られるようにすることにある。

というのも、今は、森には私が1人 —リンと一緒に— で来るか、みんなで来るかの二択になっている。

これを、カイトとポーラが2人で、『アマジュの実』や『セルの実』を採りに行けるようになれば、その間私は狩りをしたり、もっと広い範囲を探索したりと、時間を有効に使えるようになる。

今では、カイトの『土魔法』もレベル2であり、何回も私の階段を見ているからか、階段を作るのはまったく問題ないし、採った実を入れる箱も作れる。それに、リンを同行させてもいい。

ポーラは『土魔法』は使えないが、『火魔法』、『水魔法』、『光魔法』のレベルが4であり、ファングラヴィットは一撃で仕留められるほどの戦闘力がある。

この上、2つの群生地を拠点として、組み込んでしまえば、2人で送り出しても安全だと思うのだ。



2つ目は、岩山や洞窟の改造である。

この岩山は、半径が100メートルほどで、高さは20メートルほどだ。その真ん中10メートルほどの高さに、半径10メートルほどの半円状の足場があり、洞窟の入り口に繋がっている。

洞窟はまっすぐ奥に、30メートルほどで、高さは3メートルほどだ。


つまり、洞窟はもう少し奥へと拡張できるし、下方向へ穴を掘って、部屋を作ることもできるわけだ。

一度試したが、洞窟の壁を『土魔法』で掘り進めることもできるようだった。

洞窟を奥へ、もう20メートルほど拡張したい。今は、洞窟の奥にそれぞれの寝床を作ってみんなで寝ている。しかし、カイトも12歳の男の子だし、私やポーラと一緒に寝るのが恥ずかしい年頃だろう。それに、個室はあっても困らない。

洞窟を奥へ広げて、仕切りを『土魔法』で作れば、簡易ではあるが個室を作ることができる。

それに洞窟の下に、保管庫なんかに使えるような地下室を、2、3個作りたい。

今は洞窟奥に、仕切りを作って肉の入った箱や、塩や『シェンの実』から作った調味料の入れ物を置き、魔石や牙なんかも保管しているが、もうキャパオーバーだった。

洞窟の下に、食料を入れておく貯蔵庫、この際『水魔法』で大量に氷を作って、冷蔵室みたいにするのもいいかもしれない。そして、魔石や牙など、食料以外の魔獣から採れる素材なんかを保管しておく、宝物庫のような部屋。これらを作りたい。



岩山には、毎回、『土魔法』で階段を作って上っている。

別に階段を作る程度、苦ではないし、カイトでさえ魔力の消費も問題ない。

とはいえ、毎回作るのは面倒だし、ギリギリの状態で洞窟に逃げ帰っている場合を想定すると、すぐに洞窟に入れないのは少し危険だ。


・・・・・・階段を常設にしたうえで、岩山の周辺に魔獣が近づけないように、堀を作る?

他にも、バリケードのようなものを設置してみようか。

そんな簡易な設備では、グレイムラッドバイパーなんかは止められないだろうが、そもそもヤツらは穴を掘れるし、階段が無くても、岩山を登れるだろう。

そうすると、対処が必要なのは、ファングラヴィットやフォレストタイガーであり、それは、堀やバリケードで対処可能だと思う。


・・・よし、やってみよう。

別に思い通りのものができなかったら、壊せばいい。



そんな感じで、カイト達との相談で出たアイデアを具体化していく。

よし! 昼ご飯を食べたら、さっそく取り掛かろう!


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