第14話:魔法について考えよう

空を見上げると、まだ太陽は高く昇っていて、日が暮れるまで、時間はありそうだ。

ただ、あまり長時間、洞窟に戻らないと、カイト達が心配するかもしれない。

しっかりしているが、まだ12歳と6歳の子どもだ。

不安にさせるようなことはしたくない。

それに、リンにも2人を紹介したい。

そう思い、リンを連れて、一度、洞窟へ帰ることにした。



リンは、ぽよっん、ぽよっん、っと、小さくジャンプしながら私の後を付いてくる。

その様子はとても愛くるしいが、少し進むのが遅い。

幸い、両手で抱えることのできるサイズなので、リンを抱えて歩くことにした。



 ♢ ♢ ♢



暇なので、洞窟への道を歩きながら、魔法について考える。

リンを従魔にした後にステータスを見たら、『火魔法』『水魔法』『光魔法』がレベル2に、『土魔法』がレベル3に、なっていた。

それに、『闇魔法』がレベル1になっていた。


おそらく、『火魔法』『水魔法』『光魔法』は日々の使用の結果だろう。

前も考えていた、魔法やスキルは使えば使うほど、レベルが上がるという仮説は正しかったようだ。

それに、『土魔法』。もはや私の生命線。

階段作りから狩りまで、『土魔法』なしには生活することはできない。というか、『土魔法』が無かったら、数回死んでる。

ちなみに、それぞれレベルが上がったので『鑑定』してみたところ、『火魔法』『水魔法』『光魔法』のレベル2は、『土魔法』のレベル2と効果は同じ。

魔素から、火・水・光を作り出し、それを操ることができる。といっても、『土魔法』と同じく、操る精度は、まだ大雑把なものだろう。


『闇魔法』は、相変わらず『鑑定』しても、なにも分からず。

リンの下に現れた魔法陣や、リンを包んだ黒い光は、『闇魔法』によるものだと思うが、詳細は不明。

ただ、レベルが1になっているので、『闇魔法』を使ったことは間違いない。


最後に『土魔法』。

『鑑定』すると、



 ♢ ♢ ♢


『土魔法』3

魔素から土を生み出しイメージした形を作り出せる。

形成した土を操ることができる。

魔法で生み出した以外の土を形成・合成・分離し、操ることができる。


 ♢ ♢ ♢



と、なっていた。

追加されたのは、最後の部分。

今までは、地面を軟らかく、耕すようなことはできていたが、丸っきり形を変えてしまうようなことはできなかった。それがどうやらできるようだ。

それに、『土魔法』で生み出した「土」以外も操ることができるらしい。

おそらく、繊細な操作はできないだろうが。



・・・・・・にしても、「土」か。

魔法名に「土」とあり、『鑑定』しても「土を〜」となるため、なんとなく「土」しか対象とならいないのだと思っていた。

しかし、最近多用している『ストーンバレット』で放っているのはどう考えても、「土」というより「石」や「岩」だ。


よく考えると、「土」ってなんだろうか。

森の地面も、洞窟の地面や壁も、「土」と言われれば「土」だが、もっと、「石」や「岩」といった方がしっくりくる場所もある。


それに魔法の仕組み自体もよく分からない。

イメージが重要だ、という、最初からある感覚は、おそらく正しい。

イメージを補完するものとして、発動の際に生み出したいものなんかを声に出している。

カイト曰く、魔法を使うには呪文を詠唱する必要があるというのが通説らしいが、そのカイトやポーラも、少しではあるが無詠唱で魔法が使えていた。

たぶん、イメージを補完するために呪文は作られたのだろう。

「この呪文でこの魔法が発動する」、という公式のようなものが確立された結果、「イメージする」という本質部分よりも、呪文を唱えることに重きが置かれた。その結果、呪文を詠唱しないと魔法が発動できなくなってしまったのだろう。


・・・・・・・・・使うことのできる魔法自体と、それをどうやって使うのかは別ってことかな。

おそらくだが、こういうことだと思う。

魔法ですることのできる基底を定めているのが、各種、使用可能な魔法だ。当然、レベルが上がればできるようになることも増えていく。

そのため、『土魔法』レベル1の人は、どれだけ具体的なイメージをしても、土の塊を発射することはできない。操る能力が無いからだ。

他方で、基底にある、「○○を生み出す。○○を動かす。」以外の具体的な生み出すもの、動かし方は、イメージによって左右される。

たとえ、『土魔法』レベル2であっても、動かし方のイメージが無ければ、動かない。



それから、試しに、と地面に転がっていた石ころに目を向け、ゆらゆらと浮かび上がる光景をイメージしてみた。

すると、石ころは、イメージ通りに浮かんで、意識を離すと。落下した。


次に、冷たい、ひんやりとした、「氷」をイメージしてみる。

すると、目の前に、氷塊が出現した。

クライスの大森林は、それほど暑いことはなく、大きな木々のおかげで直射日光も当たらないので、比較的快適だが、冷たい水を飲みたい欲求はあった。

なので、試しにと思い、「氷」を出せないか試してみたが、うまくいった。


・・・しかし、ステータスには、氷魔法なるものは、追加されていなかった。



・・・間違いない。

『土魔法』の「土」は、とても広い概念なんだ。

「石」や「岩」も、「土」に含まれるし、もしかしたら、金属類なんかも含まれるかもしれない。


それに、「水」には「氷」も含まれるみたいだ。

いままでなら、新たに魔法を使えるようになったら、ステータスに追加されていた。

今、明らかに魔法で氷塊を生み出したのに、新しい魔法は追加されていない。

となると、既存の魔法。考えられるのは、『水魔法』しかない。



他にも魔法の種類があるかもしれないのであくまでも仮説だが、○○魔法における、○○という分類の部分は、とても抽象的な、広い概念なのだと思う。

広い意味で、「火」なのか「水」なのか。そういった分類だと思う。



この仮説が正しいのか証明する方法はない。

そもそも、この帰り道の間の出来事だけでも、私にできることは飛躍的に増加する。

とりあえず氷が使えるようになったから、肉なんかの保存の道が見えた。

それに、魔法で生み出した以外の「土」も、形成し、合成し、分離し、操ることができるのならば、洞窟を住みやすいように改造することだって、できるかもしれない。



それに、違ったら違ったで構わない。

少なくとも、今使えている魔法が使えなくなるわけじゃない。

これからどうやって、使えるものを増やしていくかの話だし。

これからも、この、クライスの大森林で生活していくのだから、一つ一つ試してみればいい。





・・・・・・ただ、何故だか、この仮説が正しい、そう感じている。いや、確信している。

そもそも、生まれて数日、魔法を使い始めて数日なのに、こんな、魔法について、深く考えていること自体が不思議なのだ。





『魔法適正』、しかも“極”。

未だに、『鑑定』でも詳細を調べることができない、このユニークスキルが、私に、魔法に関する知識を授けてくれている、そんな気がした。

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