第8話 愛のパクパクマシン!

3人の若者はウンウンと不揃いだが、共通の肯定をしていた。

「医科大の講師なんですよ。」暫く見ないと想っていたら講師をやってたんだ!しかも医科大で!

「准教授です。」もうちょいで教授じゃん?

「その上善寺准教授がここの営業さんから買うようにと、・・・。」ビクン!と亮一のセンサーが反応した。

「誰だっけ?まい・・・、まいば、エーット・・・。」

 口許に手をやっていたが、「米まい宗像だったら私ですが?・・・」米原に盗られてたまるか! 嘘をついていた。

 一番高身長の若者に、答えた。割りと普通だった。驚きだった。

 もう准教授まで行ったんだ。

「まあまあ、営業は誰でも同じです。同じ性能の新車を売る訳ですから・・・。」

上善寺直美は3年前宗像の前から姿を消し、所在不明となっていたが、宗像が今一番会いたい人の中に入っていた。

 因みに牧野つばさは、今一番会いたくない女ナンバーワンだった。

.さっきの久美ちゃんのカミングアウトも驚いたが、今度はもっと驚いていた。

 ナオミが医科大の講師だなんて、準教授だなんて、もうすぐ教授になるんじゃないのか?

それにしても何でトップセールスマンの米原務(まいばらつとむ)を知っているんだ?

 ヤツは六大学卒業なんだぜ?

僕の最終学歴は商業高校なのに・・・。

 劣等感に苛まれ二度と立ち上がれないと、思っていたが、久美ちゃんと、僕! 僕達はコロナ 感染症を撲滅しなくてはならない!今度はオミクロンが味方だ。

 いつの間にか久美ちゃんとワンチームにしていた。

仄かな恋心は直美に抱いていた恋心とはチョット違い、特別な感情をホワイトアウト並みに胸の奥に恋の炎がポッポッと去来していた。

 何時もとは違う感情だった・・・。

それにしても強敵はコロナ族よりも地球人の米原務!

 「左脚の振り出しの時、股関節を緩めてね・・・。」

「例えば右足に重心を置きながら左股関節を緩める!うん!そうだ。

もっと足底の母趾内転筋に付加を掛ける!そうそう。

今背中が起立してる!」

 米原務(まいばらつとむ)はディーラーの新車営業ながら理学療法士だった。

既にリハビリセンターを4つ立ち上げ、あと2事業所を開業する準備が出来ていた。

しかし、複数の拠点を管理・掌握するのは、難しく経営が健全でなければ従業員の育成も出来ない故に営業経験値を積むべくカローラ岐阜に入社、営業職を希望していた。

 入社後一週間で初受注を上げ、それからというもの既存ユーザーの定期訪問を満遍なく定期的に実施した。

 初めはユーザーの門扉は固く、門前払いが多かったが、原職が理学療法士だけに粘り強い定期訪問を初め法定定期点検や車検に伴う展示会の誘致を続ける内にユーザーも慣れ親しみ、米原無くしては話題に為らなかった。

 カリスマ的存在になって行った。

そんな米原の情報を直美の3人の助手から聞くなんて!許し難いケースだった。

 許せないのは、直美がサービスフロントで点検に出した車輌を引き取りに来た時納車の為に戦車をするメカニックの「所作を待ち亮一と暇つぶしがてら会話をしていた時の事、「私、彼と一緒だと落ち着いて眠く為っちゃうのよね・・・。

つとむさんを信用している証拠だねって、彼と話し合ったわ。」

「もう彼なしの人生なんて考えられない。」

「 ナオが安心してくれるなら僕は本望だし、キミの子供の事は何も心配しなくていい。」

って言ってくれたわ・・・。」眼がウルウルしていて・・・。

 なんという表情だ! 僕と一緒に居た時は普通だった。

既に心を奪われて何してんだ直美! 

 怒りと嫉妬が込み上げ履きそうになっていた。

怒りと嫉妬というのは、自分自身の宗像亮一であって、米原務の営業成績ばかりを気にして務本人の本質を見極めていなかった亮一自身に対して腹が立っていた。

 販売台数をぶち抜くには、輸出業者であって、一台販売。2台販売。なんてピストルみたいな売り方ではなく、もっと波動砲みたいな!

 一つの受注で10台、20台と数を稼げる販売先を探していた。

亮一の粘り強い輸出業者への度重なる訪問が功を奏して24台の受注が舞い込んで来た!

「行き先はベトナムか・・・。」

「まあいい、だけど譲渡証は発行しないからそのつもりでいてくれ。」

 二つ返事で車輌部本部長の許しを得て、24台の注文書を貰った。

「これで米原はぶち抜ける! 何も知らない宗像は、ほくそ笑んでいた。

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