酔っ払い姉の濃厚豚骨しょうゆ耳かき

ちゃんちゃらめ

第1話 オープニング

インターホン


「は~い」


ドア音


「やっと来てくれた~。毎週呼んでるのに今日は一時間も遅刻してくるなんて、まったく我が弟ながら情けない」


「えっ、『10時はまだ頭痛いから12時に来い』って言ったんだっけ? アハハ・・・ハ・・・、まあ、いいから入って入って」


「『部屋が汚い』って何当たり前のこと言ってるの? それじゃ、掃除はじめるよ」


「こら、耳なんか弄ってないで部屋の掃除を始めて」


「はいこれ、ごみ袋」


「えっ、まったく足りない!? 一番大きいやつだよ!??」


「えっ、えっと、・・・あと三枚くらい残ってるけど・・・」


「ええっ! 空き缶だけで三枚ともいっぱいになる・・・」


「それじゃ、困るよ。まだ、パック酒もカップ酒もあるし、おつまみの袋とかカップ麺の容器とかいっぱい、い~っぱい残ってるんだよ・・・」


「じゃあ、空き缶の片付けといて。私、ゴミ袋買ってくるから。・・・何枚くらい必要?」


「あっ! こっち部屋も同じくらい汚いからそれも考慮して教えてね~」


ドア音


「ほらね、こっちの部屋も汚いでしょ」


ドア音


「二十枚ね。わかった」


「空き缶片づいたら山盛りの洗濯物と台所のカップ麺も洗って乾かしといて。それじゃ、行ってくるから」


ドア音



ガサゴソ音



ドア音


「ただいま〜。こんなに買うなら車で行くんだった。足が棒になりそう」


「はい、これゴミ袋、んでこっちは今日飲む大量のお酒ぇ〜」


プルタブ開ける音

喉越しASMR


「あぁ〜、運動あとの後のお酒、サイコー!」


「『ゴミを増やすな』?いいじゃんこれくらい。それで部屋はどれくらい・・・」



「うわ〜。綺麗になってる〜。床が見えるなんて久しぶりかも」


「まっ、足の踏み場ができたくらいなんだけど・・・」


「あっ!こんなところにあったんだ」


「ん? ほらこれ、耳かき棒!」


「『なんで、カップ麺に突っ込んであったのか』?」


「・・・う~ん、確か・・・」


「割りばし一本だけ落としたときに代わりに使ったんだっけ? 長さもいい感じだしさ!」


「食べたらすぐ洗えばいいやって軽く考えてたけどすっかり酔いつぶれて忘れてた。このカップラーメン食べた後の記憶が無いし。ほらコレ、濃厚豚骨醤油味のやつ!」


「もう、そんなにガミガミ言わなくてもいいでしょ。あんたが使うわけじゃないんだから。とりあえず耳かき棒も台所に持ってって」


「はい、はい。わかった。わかった。ほら、怒らないで二人でちゃっちゃと終わらせよ」


ガサゴソ音


「(溜息)、分別ってめんどくさい。全部同じでいいじゃん! カップラーメンもカップ酒も燃えるゴミでいいでしょ!」


「・・・はいは〜い。SDGsは大切だよね〜。環境に配慮できる弟がいて私は嬉しいよ」


プルタブ開ける音

喉越しASMR


「ぷふぁ〜、サイコー。はいはい、次は台所ね」


水道の音


「耳かき棒って食洗機で洗える?『やめた方がいい』、えぇー、梵天、黄ばんでるんだよ・・・漂白剤で綺麗になるかな?」


水道の音


「終わった~」


プルタブ開ける音

喉越しASMR


「あぁ〜、美味しい。洗濯物を干すだけだぁ〜」


プルタブ開ける音

喉越しASMR


「し、下着は私がやるから」



プルタブ開ける音

喉越しASMR


「っあぁぁぁ〜、掃除、洗濯、全部おしまい。」


「流石弟!床に家具とカーペットしかない部屋なんて・・・私一人では決して叶ぬことであったぞぉ〜」


「それじゃあ、綺麗になったので報酬を」


「・・・あっ」


「えっと、ちょっと待って、・・・はい、この封筒に今入れたから」


「いい、ここじゃ、絶対開けちゃだめよ。家に帰って中身なんか確認せずにサッとお財布に入れ・・・はわわ、開けちゃダメって言って・・・」


沈黙の間


「そうよ、野口よ。諭吉なんて用意できなかったのぉ!!」


「ダメ?そう・・・はい、すいませんでした。・・・昨日、掃除の報酬を分けておこうと思っていたのに酔い潰れて忘れてたった今お酒に変わりました」



「そ、そんな怖い顔しないでぇ、だから、その・・・えっと・・・お金が用意できなくて・・・」


「そうだ! あんたその年でまだ童て・・・」


机がガタッてなる音


「なによ! そうよ! お金が用意できないから最終手段よ!!」


「いい方法でしょ! あなたは、卒業出来て私は今週を乗り切れ・・・」


「『近親交配とかマジで勘弁。お金じゃないと困る』なんか、買いたいものでもあるの?」


「へぇー、耳かき屋さんで耳かきしてもらう・・・え、耳かきってそんなに高いの!」


「そうだ! ちょっと待ってて」


「えっと、スマホどこだっけ?・・・あった!」



〈み・み・か・き・せ・ん・も・ん・て・ん・りょ・う・き・ん。っと、検索、検索〉


(えっとぉ〜、1時間強で、ふ~ん大体)


「い、1万円!! 嘘、耳ほじくり返すだけでぇ!!」


沈黙の間


「フフフ、今回のお礼は現金じゃなくて耳かきにします!」


「ちょっと待っててね。台所から耳かき取ってきたら膝枕でやってあげる」



「お待たせぇ〜、どうしたの嫌そうな顔して?」


「えっ、耳かきが嫌なの? なんで!?」


「どうせ現金でも耳かきに使うんだし、今耳かきしても一緒でしょ!」


「つまり、あんたが選べるのは今週は見逃してくれるか・・・」


(エ、エッチか)


「な、なんでもない。だから、その、耳かきをしてもらうかの2択しかないの!」


「でも、弟に見逃してもらうと私がモヤモヤするから、見逃されるのは嫌!」


プルタブ開ける音

喉越しASMR


「ぷふぁー、だから、耳かきしてあげる。ほら、お客様ぁ〜、私の膝に頭をお載せください」


「右耳からね、じゃ、入れるよ」

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