中学生

中学生

髪踊る風の光を捲き込んで

くちづける立ってぶらんこ漕ぐやうに

恋猫や肉体（からだ）のことに不用心

きらきらは嘘つきの音夏化粧

夏草やいま踏み出せば届くのに

夢果てぬラムネの瓶の底にゐて

夕立や止まった世界にふたりだけ

｢その人が好きなの？｣と問う遠花火

柘榴食む誰にも言っちゃだめだよと

指切りは裏切りの色夜半（やわ）の月

淋しさに衝かれ長夜を駆け抜ける

訣別を告げて旅立ち爽（さや）かなり

家出行（こう）星の流るる方角へ

眼差しの冴えて朝（あした）を見つめをり

もうきっと叶うことなし青写真

冷えた指君の温度を盗みとり

くちづけをはなして朦（もう）と息白し

帰れないホームのふたり冬星座

春外套（コート）狡さをひとつ身に纏い

花吹雪空いちめんのさやうなら