第10話 side深月
「ちょっ!? いや、待って! 」
抱きしめた朱莉が腕の中で慌てている。
私こそ待って欲しい。もう胸がいっぱいで受け止めきれない。
言えなかった、ローソクを消す時のお願い事。
朱莉に傍にいてほしい。
その願い事を口にすれば、優しい朱莉の負担になってしまいそうで言えなかった。
誰かを願うなんて、私には怖くて出来なかった。
「みっ、深月?」
「うん」
「ちょっと離れて欲しいかなぁ?」
「やだ」
「やだっ!? なんで!?」
「離れたくない」
そっちこそなんで。離れたくないに決まってる。
私は願い事を言えなかったのに、朱莉は叶えてくれた。思い出をくれて、寂しくないようにってうさぎをプレゼントしてくれた。一緒にいるって言ってくれたんだ。
気持ちが溢れて止まらない。
「わっ、分かった、から。少し落ち着いて。ね?」
むっ⋯⋯。私は朱莉を困らせたいわけじゃないから、ちょっとだけ離れてあげる。嫌だけど。
開いた距離に、いっぱいだった気持ちが減ってくような感じがした。
なんだろうこれ。なんか、嫌だな⋯⋯。
朱莉が起き上がり、私はまた朱莉を抱きしめる。
「朱莉に言われたとおり、ちょっと離れたからもう離れない」
むしろ、私は我慢したんだから、今度は朱莉が我慢する番だ。私が寂しくないようにってうさぎをくれたんだから、朱莉は責任を持つべきだ。
きっと、さっきの嫌な感じが寂しいって気持ちだから。
「朱莉、ぎゅってして?」
減った気持ちを埋めたくて、物理的な距離を埋めていく。
朱莉は責任を持つべきなんだ。だって朱莉が言ったんたから。
うさぎも寂しいと死んじゃうんだって。
―――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます