第25話:店の名前はSATSUKI

沙都希は毎日、祐と一緒に仕事ができることが嬉しかったし、楽しかった。

お昼前にお客さんが一時途絶えた時のこと。


「あのさ、沙都希・・・このさいうちの店の名前変えるか?」


「え?」


「美容・反町なんてダサいだろ」


「英語でSATSUKI・・・これで行こう」


「え〜私の名前?・・・恥ずかしいよ」


「いろいろ考えたんだけど・・・それが一番いいと思って」


「SATSUKI・・・いいよな・・・」

「決めたからな」


「相変わらず強引なんだから」


「一応は報告しただろ?」


「もし私がお店辞めたらどうするつもり?」


「え?辞めるのか」

「離婚はまだ早いんじゃないか?」


「離婚って・・・まだ、いっしょにもなってないし」

「だけど、今のままの祐でいてくれたら私は辞めないと思うけどな・・・」


「だったら大丈夫だ・・・俺はブレないから」


「まあ、もし沙都希が辞めて、誰かに店の名前の由来を聞かれたらお店の

オープンが5月だったからですって答えるよ」

「って言うか、沙都希が辞めたら、俺も辞める」


「なんでよ、喜代さんの後継いでカリスマ美容師になるんでしょ」


「俺の人生に沙都希がいないなんてありえないから・・・って」

「そういや、沙都希、誕生日いつだっけ?」


「9月22日」

「私が生まれた月が5月だったら言うことなかったのにね」

「本当だな、9月生まれなのに沙都希ってな」


「9月22日・・・覚えとく・・・」

「忘れてたらごめんな・・・おれ、お袋の誕生日もすぐ忘れるんだ・・・」


「なに?喜代さんの誕生日くらい覚えときなさいよ」


「9月・・・22日だよな・・・」


「あ、店名、SATUSKIでいいよな」


「お任せします」

「じゃ〜明日にでも早速、看板屋に電話しとくか」


「看板屋?・・・」


「どうかしたか?」


「ん〜ん、なんでもない」

「でも喜代さんに言わなくていいの」


「もう言ってある・・・そしたら好きにしなさいって」

「それにあの人、最近やる気まるでないし・・・」


「あの人って・・・お母さんって言いなよ」


「おふくろも長い間、働いてきたからな」

「引退するのはまだ早いけど、少しは自分のやりたいことも させてやりたし」


「私も祐も境遇が似てるね、うちも母子・・・・・・」


「・・・・・・あ・・」


「ゆう・・・ゆ・・・・わたし・・おかしい・・・」


そういう間も無く沙都希はそのまま意識を失って倒れこんだ。

いや、倒れる寸前をすがさず祐が支えていた。


「沙都希・・・さつき・・・おい!! さつき〜」


名前を呼んだが沙都希に反応はなかった。

祐は沙都希を抱いて店のソファーに寝かせて、すぐに救急車を呼んだ。


つづく。

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