第24話:祐の卒業。

祐は沙都希とのことを喜代さんに打ち明けた。

喜代さんは、最初は驚いたが


「祐ちゃんがいいと思ったのなら、私はいいよ」って言ってくれた。


沙都希が店に来て、ゆうに半年は経っていたから喜代さんも沙都希の人柄を

認めていたんだろう。


祐は沙都希にそのことを告げると、沙都希はなにも言わず祐に抱きついた。

声を出せば、そのまま泣いてしまいそうだった。

祐は沙都希を抱きしめていたので、沙都希のほほを嬉し涙がつたったことを

気づかずにいた。


これで名実ともに沙都希と祐は誰はばかることなく恋人どうしになった。


お店の方も順調よく最近は休憩する間も無いくらい忙しかった。

祐が学校へ行っていない間、喜代さん店に出たが、調子が悪い時が沙都希ひとりに

お店を任せていた。


下手すると前の美容室より忙しくしていたかもしれない。

でも、同じ忙しいでも、前と今では充実と言う点では雲泥の差があった。

沙都希には心にゆとりと希望と、そして目的があったから・・・。


希望とは祐のこと。

目的とは祐とこのお店を引き継いでいくこと。

喜代さんを早く、楽にさせてあげたかった。


だから祐は嫌でも学校は卒業しなきゃいけなかった。

卒業証書がないと国家試験が受けられないからだ。


美容学校にはたくさん女性がいたから、祐は告られることが多かったが、ことごとく

「ごめんなさい」だった。

告るのも告られるのも疲れる・・・断る方はもっと辛い。

少なくとも告った相手を傷つけるから。

全部「お願いします」っ言ってたら、彼女が何人いたか分からないくらい祐は

モテた。


だから祐は早く卒業したいと思っていた。


それは美容学校を卒業した沙都希にも想像はできたかから祐のことがめちゃ

心配だった。

もちろん祐を信じていた・・・でも、祐が自分の近くにいない時はやっぱり

不安だった。

揺れ動く乙女心は・・・切ないのです。


沙都希は美容学校に通ってる時は、好きになったのは颯太だけで他の男に告った

ことは一度もなかった。

美容のクラスには男性は少なかったが、それでも男から告られたことは何度か

あった。

祐と同じく、ことごとく「ごめんなさい」だった。


美容師をする前は自分から男に寄っていくことは、まったくなかった。

その頃の沙都希は男を信用していなかった。

生活のために、男と関わらなきゃいけなかったから、そうしていただけ。


それもみんな忘れてしまいたい過去だった。


沙都希は祐の卒業を指折り数えた。

祐が卒業したら、そしたら毎日、朝から晩までいっしょにいられる・・・。

自然とテンションが高くなる沙都希だった。


そして祐は沙都希と出会って残り半年だった学校をがんばって卒業した。


これで国家試験を受けられる資格ができた。

あと1年、店でインターンとして技術を身につけていったら、めでたく試験。

みんなそうやって美容師になっていく。


祐は喜びいさんで、チャリで店に帰ってきた。


店にお客さんがいたにも関わらず沙都希は、お祝いを祐に言った。


「卒業おめでとう」


祐は、そのまま沙都希までまっす来ると彼女を抱きしめた。

最近はなにかあると、祐はすぐに沙都希をハグした。


「まあ・・・そういうのは店の外でやってよ」

「私も抱きついてほしいわ・・・変わってくんない?・・・沙都希ちゃん」


お客のおばさんたちに、さんざん冷やかされた。


「祐、卒業おめでとう」


沙都希はもう一度言った。


「ありがとう沙都希・・・ずっと一緒だからね」


つづく。

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