第18話:バックハグだよ〜。

沙都希は祐に連れられて久しぶりに街に出た。

ご飯を食べて、商店街をぶらぶら歩いて、ふたりはカフェテラスの椅子に

座ってスイーツを食べながら休憩していた。


「ねえ、たぼこ吸っても?・・・いい?」


「たばこ吸うのか?・・・始めて見るな」


「店じゃ昼間にたばこ吸うの我慢してるから・・・」


そう言って沙都希はバッグからたばこを出して吸い始めた。


「個人の自由だし、束縛もしたくないから言いたくないんだけど俺は女が、たばこを

吸うのは好きじゃない」

「体にもよくないしな・・・」


「体に悪いって?・・・その根拠ってなに?」


「子宮ガンや乳がんになる確率が高くなるってよ・・・」


「だから、たばこはやめな」

「沙都希は、そういうの、似合っちゃうか らダメなんだよ」


「でも、やめたほうがいい」

「好きな女の体だから俺は心配してるんだよ」


そう言われて沙都希はすぐに灰皿にたばこをもみ消した。


「分かった、たばこやめる」


「ほんとだな・・・約束だぞ・・・もし破ったら・・・」


「ああ、いいやそういうことって個人の自由だもんな」


「束縛しないって言ったばかりなのに・・・」

「矛盾してるよな・・・」

「約束なんかして沙都希を拘束したくないし・・・」


「たばこは気を紛らわすために、吸い始めたの」

「今はもう吸う必要ないかもね・・・」


「少し心にゆとりが出てきたかな・・・」


「・・・・・・・」


「沙都希・・・抱きしめてもいいか」


「えっ、あ・・・あの・・・」

(唐突だし・・・)


「だめか・・・やっぱりだめか?」


「ダメとか言ってないし・・・」


「いいの?」


「・・・いいよ」


祐は沙都希の後ろに回って、背中から沙都希を抱きしめた。


(バックハグだよ〜・・・おいおい、キュンってくるじゃん)


「あ〜すごくいい匂いた・・・」

「柔らかい・・・暖かい」

「もう未来永劫ずっとこうしてたい わ・・・」

「沙都希・・・大事にするよ」


「祐・・・・」


「わ、おっぱいデカッ」


「うそ〜、どこ触ってんの、スケベ」


「ごめん、ごめん、つい手が滑ったわ」


「言い訳するな、ヘンタイおやじ」


「まだおやじって呼ばれる歳じゃない」

「いや、それにしても、なにカップだよ」


「なにカップでもいいでしょ」


沙都希は祐みたいな男は、はじめだと思った。

真面目なのか、ふざけてるのかよく分からない。


一見ぶっきらぼうだけど、きっと心根は優しいんだ、沙都希はそう思った。

澄んだ濁りのない瞳、 外観はクールだけど、内面には秘めた熱い情熱

みたい な・・・。

どこまでも自然体で、時々見せる遠くを見つめるような視線。


祐の中に喜びと悲しみが同居してる。

最初は祐のほうが沙都希に惚れたが 今は 逆に沙都希のほうが祐に惹かれていた。


つづく。

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