第16話:少しづつ変化していく心。

沙都希と祐が付き合うようになって数週間が過ぎていた。

付き合うといっても、まだデートすらしてなかった。

お店が思ったより忙しかったのは、もしかしたらイケメンが店にいたからかも

しれなかった。


お客の大半は女性。

おばさんの中には祐目当てで来てる客もいた。

それはしかたのないことだった。


最近、喜代さんは体の調子が悪く、あまりお店に出てこなくなった。

お店はもっぱら沙都希と祐に任せっきりだった。


昼間、祐は学校へ行ってたから沙都希がお客の相手をしていた。

4時半頃、祐が帰ってきて沙都希を手伝った。

祐は沙都希とも、うそのようによく話したし、お客とも打ち解けていた。


朱に交われば赤くなるじゃないが、

沙都希は祐に感化されて、少しづつ彼に心を開き始めていた。


祐は時々、冗談なのか真剣なのか分からないようなことを言ったり未だに

心が読めない部分を持っていた。

でも沙都希には、変わることなくいつも優しく接してくれた。


仕事も近所の奥さんにからかわれながらも、よくがんばっていた。

お互い牽制し合うようなこともなかった。


そんな祐を見て、沙都希は嬉しかった。


(それでこそ跡取り・・・よくがんばってるぞ・・・)


そんな沙都希に祐が気づいて


「何、ニヤニヤしてんの?」


「あ、なんでもない・・・」


「俺の顔になんかついてる?」


「私のこと、好きって書いてある・・・」


「まじで?、じゃ〜顔洗ってこなきゃな」


沙都希はクスッと笑った。


「沙都希の顔にもなんか書いてあるぞ」


「ん?なんて書いてある?」


「俺とデートしたいって・・・」


「それ当たってるかも・・・」


ふたりは顔を見合わせて笑った。


そんな些細なやりとちでも沙都希は毎日が楽しいと思えた。

トラブルもなく、祐と仲良くやれてることが嬉しかった。

思い切ってこの店に来てよかったとつくづく思った。


祐ともっと近づいてもいいとさえ思っていた。

と言うより祐のことをもっと知りたいと思った。


夜になってようやく最後の客が帰った。


祐はそうそうにガラスドアのカーテンを閉 めて、外の電飾看板の

スイッチを切った。


「どうしたの、急いでるね・・・どこかに出かけるの?」


「沙都希、これから俺とデートしないか、街にでて飯でも食ってブラブラ

しようか?」


「うそ、まじで言ってる?」


「まじまじ」

「ずっと店の中ばかりにいて外にでてないだろ?」


「するする・・・飯食ってブラブラする」

「ブラはするけど、ノーパンでもいい?」


「え〜そんな、おっさんみたいなギャグ言うんだ・・・」


つづく。


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