蘇生の成功術
森本 晃次
第1話 世の中の諸問題
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。今回もかなり湾曲した発想があるかも知れませんので、よろしくです。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。呼称等は、敢えて昔の呼び方にしているので、それもご了承ください。当時の世相や作者の憤りをあからさまに書いていますが、共感してもらえることだと思い、敢えて書きました。ただし、小説自体はフィクションです。ちなみに世界情勢は、令和三年六月時点のものです。それ以降は未来のお話なので、これは未来に向けたフィクションです。
時代は、令和三年六月、世の中は、急変化の途上にあった。二年前の暮れから発生した新型ウイルスによる伝染病が、全世界で猛威を振るい、国によっては、ロックダウンという都市封鎖を行ったりして、世界中が大混乱どなった。
ある程度まではウイルスについての研究も行われ、解明したことも多いことから、ワクチンの開発などによって、ある程度まで抑えることができる国も出てきた。
しかし、まだまだ世界的には流行が収まっておらず、日本でも、緊急事態宣言を出したり解除したりと、さらに政治家の利権が絡んだりして、混乱したりしていた。
そんな政府を脅かす存在であるはずの野党も、さらに腰抜けであった。批判だけは一人前だが、何ら新たな施策を示すこともないので、国民も騙されない。
政府への支持率が裁定になりながら、野党の支持率も上がってこない。
「次回の選挙で、今の政府を下野させなければいけないのだが、それに代わる政党がいない。野党になりやらせれば、国家の滅亡を早めるだけになってしまう」
というのは、大方の市民の意見であった。
何しろ、野党に言っていることは、政府への批判ばかりである。
今の新型ウイルスに対して、
「ゼロを目指す」
などという、非科学的なことを言って、少しでも国民にいい顔をして票を集めようとしても、結局は、
「我々国民は騙されない。バカにするんじゃない」
というだけであった。
そもそも、新型ウイルスの対応に政府が乗り出した時、野党は、別の問題をやり玉に挙げて、ウイルス問題に真剣に向き合おうとはしなかった。
新型ウイルスが猛威を振るい、国がいろいろ国民に制限を掛ける時になって、
「やれ人権がどうの、新型ウイルスをゼロにする」
などと、嘯いて国民の支持を得ようとしても、批判するばかりで、何ら代替案を出してくるわけではないので、誰も話を訊かない。
しかも、与党を下野させるためだけに、政策の違う別の党と同盟を結んだりと、何でもありだった。
それでは、本当に政策を信じてついてきた有権者を裏切ることになるということを、まったく分かっていないのだ。
「票のためだけに国会議員をやっているんだったら、利権だけのために政治を行っている一部(いや、大部分かも知れないが)の政府高官とかわりはないはないか」
と言われるのがオチである。
だから、選挙で投票にいく人が少なくなり、投票率が下がってしまう。
投票率が下がると、
「与党に入れたのと同じ」
と言われるだけであり、下野させるためには、選挙に行って、与党以外に入れるしかないのだが、野党に入れるわけにもいかず、今の選挙ほど難しい選択はないと言えるだろう。
「利権のためには、国民の命も犠牲にする」
という与党か、あるいは、
「票のためには、与党の批判ばかりで、政策などまったくない」
という野党に入れるかという、究極の選択でしかないのだ、
どちらに入れても、国家は滅亡する。与党であれば、亡国や売国に加担することになるし、野党に入れれば、国家の滅亡を加速させるということである。
マス「ゴミ」も当てにならない。国民を煽るだけ煽って、混乱を誘発させて、自分たちが儲かろうというだけで、マスコミとしての本来の仕事ができない。マス「ゴミ」と化してしまっているのだ。
大東亜戦争時代の、情報統制があるわけでもない。もっともあの時代の報道を、すべて情報統制だったと言い切れるかどうかという問題もある。一定の新聞社は政府や軍部などよりも、さらに過激な記事を自分たちの考えで載せていただろうからである。
当時、大本営発表を政府が陽動できるわけではなかった。なぜなら、大日本帝国憲法の中に、
「天皇は陸海軍を統帥す」
という言葉が書かれている。
ということは、軍部というのは、天皇直轄ということになり、政府であっても軍部の方針に意見をすることはできなかったのだ。
あくまでも、天皇が軍部の頂点にいて、
「大元帥」
として君臨していた。
天皇は、政治に対しては、基本的に口出ししてはいけないことになっているが、軍部に関しての最高責任者なので、命令もできるのだ。そういう意味でも、政府は天皇を飛び越えて軍部に何も言えない。だから、大本営発表に政府は関わっていないことになる。
よく、戦争を始めたのは、東条内閣なので、
「日本の戦争責任者は東条英機である」
と言う人がいるが、それは違う。
彼は首相であり、陸軍大臣ではあるが、最初から参謀総長として大本営に関わっていたわけではないのだ、
慣例として、陸軍であれば、
「陸軍大臣などのように、政府の中にいる人間は、参謀総長を兼任してはいけない」
ということになっていた。
つまり、軍部における独裁を許さないからだった。
そもそも、明治政府の作った元勲たちの政府と軍部の二元化ということが問題なのだが、慣例にしたがえば、首相で陸軍大臣である東条英機は、戦争指導をしてはいけないということになる。だから、厳密にいうと、
「東条英機は戦争指導者ではない」
ということになるのだ。
ただ、この柵があることで、戦時に何もできないことを憂いた東条英機は、天皇に上奏し、陸軍大臣と参謀総長の兼任、海軍における、海軍大臣と軍令部長との兼任を認めさせた。これにより、東条は参謀総長として、戦争指導ができるようになった。
その頃までは、東条は政府側の人間だったので、まさかこれほど日本が負けていたということを知らなかっただろう。
さすがに、大本営発表のすべてを正しいとして見てはいなかっただろうが、衝撃だったに違いない。
しかし、もう時はすでに遅かった。元々の計画での、
「緒戦で、圧倒的な勝利を持って、相手国に戦争継続意欲をなくさせたところで、うまく有利に交渉ができるように和解に持ちこむ」
ということができなくなってしまったのだ。
このまま、一気に負けを重ねていくか、不利と分かっていて、和解を申し込むかのどちらかだったのだが、前者を選んだ。
そこには、連合国による占領下での、
「国体の維持」
つまり、日本における天皇制が確保されるかということだけが、大きな問題であった。
もし、保証されないのであれば、それこそ、一億総玉砕という最悪のシナリオが用意されていることになるのだ。
そもそも東条英機が首相になったのも、その前の近衛文麿が、政府の会談において、開戦勢力の強さに、自分が立ち向かうことができないことから、政権を投げ出して、逃げたことから始まったのだ。
当時の日本の首相任免権は天皇にあった。天皇が元老などの意見を聞いて決めることになるのだが、東条を強く推したのが、当時の内大臣である、木戸幸一であった。
彼の考えは、
「東条のように天皇の従者のような男は戦争回避の天皇の考えを受け継いでくれるというものと、当時の陸軍の暴走を止めることができるのは、東条しかいない」
という考えからだったという。
そういう意味で、東条英機に対するイメージとは結構違っていたりする。
ではなぜ東条英機が悪者になっているかというと、
「極東国際軍事裁判(東京裁判)において、東条を悪者にすることで、連合国の勝者としてのメンツを保とうということではないだろうか」
と言われている。
それ以降の占領軍の教育方針から、そのような誤った情報で教育を受け、
「何が自由な教育だ」
と言えるのかということであった。
当時の軍部にしても政治家にしても、令和三年時点の政治家に比べれば、どれほど真面目に国家のことを考えていたことだろう。
天皇中心の帝国主義国家だったということで、国民に対して制限もかなりあったりしただろうが、それも教育により、それが正しいと思っていたのだ。
しかし、今の民主主義という考えだって、戦後の占領軍から押し付けられた考えではないか。
そもそも、米英中蘭に対しての戦争も、閣議で、
「大東亜戦争」
という名前になっていたのに、それを占領軍に忖度したマスゴミが、
「太平洋戦争」
という名前にしてしまったのだ。
大東亜戦争という言葉の意味は、
「欧米などの帝国主義による東アジアにおける植民地を、欧米帝国主義から解放するための戦争」
というのが、大義名分だったはずだ。
それを、あくまで、日本を悪者にして自分たちが正義だということを宣伝するために、
「大東亜」
という言葉を排除したかったのだ、
かつて言われていた、
「大東亜共栄圏や、五属共栄」
などという言葉も、言われなくなってしまったではないか。
戦争における勝者というものは、敗者に対しては冷酷なものであることは歴史が証明している、そこまでしないとまた世界大戦が起こるという発想であろうが、第一次大戦が終わってからのベルサイユ体制の崩壊を考えれば、軍事裁判などというのは、第一次大戦における国家に対しての賠償が大きかったために、第二次大戦が起こったことへの教訓から、
「国家を悪者にするのではなく、戦争犯罪人を裁く」
ということで、勝者の理論を正当化しようとしただけのことではないのだろうか。
それまでは、戦争に対して、戦争指導者などとして、個人を裁くことはなく、戦犯などという言葉すら存在していなかったのだ。そういい意味でも本当の戦犯というと、都市への無差別爆撃を続けたり、原子爆弾を投下して、一夜にして大都市が焼け野原になった罪はどうなるというのだ? 実に理不尽ではないか。
今では資料もたくさん公開されているので、ちょっと調べれば、歴史のことは何でも分かる時代なのだ。それをいまさら学校で習った話を鵜呑みにするというのは、歴史を勉強しないように仕向けられているかのように思えて仕方がない。
歴史を少しでもほじくると、いくらでも理不尽で矛盾な話も出てくる。片一方からの押し付けられた理屈では説明できないことがたくさん出てくる。これこそ、歴史の勉強という名のもとに行われた「洗脳」だと言えるのではないだろうか。
そんな時代は今は昔となって、もう八十年近く前のことになってしまっている。ただ、彼らの国を憂うる気持ちには変わりなう、死んでいった彼らが、今の政府や世界を見て、どう思うだろうか?
「俺たちは、こんな日本を作るために、命を捧げたのか?」
と思うに違いない。
令和三年を、昭和初期と比べるというのは、あまりにも次元が違っているのかも知れないが、同じ日本人として、歴史の勉強すらしない連中を見ていると、情けなさがこみあげてくる人は少なからずいるに違いない。
「正しい歴史認識があれば、こんな国家にはなっていないかも知れない」
とも言えるが、逆にいえば、今の政界というのは世襲で成り立っているというのも事実だ。
元首相だって、戦争犯罪人の孫だったりする。歴史は時系列で繋がっているというのも、切り離すことのできない事実でもあるのだ。
ただ、これはあくまでも歴史という、
「時系列」
という生きているかのような時間の動きからの出来事でしかない。
世の中は原因があって結果があるのだというが、果たして、結果というのは、どの時点で出たと言えるのだろうか、今表に出ていることすべてが結果とは限らない。よくテレビなどで、事件があった場合、
「この検証は歴史が答えを出してくれる」
というが、その検証を答えだと言い切れるのは誰になるのだろうか。そのあたりも、永久に続く歴史としては、難しいところなのかも知れない。
かの、二・二六事件も、映画などで見ていると、
「歴史が必ず答えを出してくれる」
という言葉に感銘を受けたものだが、歴史というのは、主義も変われば考え方も変わる、
何が正解なのかなど、誰にも分からないのではないだろうか。
さすがに軍事クーデターのようなものは容認できるものではないのだろうが、特に二・二六事件などに関しては、歴史判断が難しいところである。
ただ、日本人は判官びいきが多いため、反乱軍を贔屓目に見る人たちが多いだろうが、見方によっては、
「陸軍内の派閥争い」
というだけのことだとも言えるのではないか、
だから、何が正解なのか、誰にも分からないと言えるのではないだろうか。正解があるとすれば、
「誰にも分かるはずがない」
という結論が正解だということであろう。
K大学では、そんな歴史研究が大学を挙げておこなわれていた。始まったのは平成の頃からなので、結構長く研究されている。
そんな中で、いきなり飛び込んできた、
「世界的なパンデミック」
が、大学どころか、世界中を混乱させた。
パンデミックなどという言葉が何なのか、それよりも初めてその言葉を聞いた人がほとんどだったに違いない。
言葉は聴いたことがあっても、まさかそんな使い方だったとは思ってもみなかったという言葉もたくさんある。
「ロックダウン」や、
「クラスター」
などという言葉も違う意味で使っていたかも知れないが、今ではロックダウンというと、都市封鎖、クラスターというと、集団感染ということに置き換わってしまった。それほどの大混乱だったのだ。
または、感染防止などで言われる、
「ソーシャルディスタンス」
などという言葉にしてもそうだ、
そういえば最初の頃に、
「専門家は、横文字ばかり並べて、何を言っているのか分からない」
と言われていたのだが、今ではこれらの言葉を知らない人はいないくらいに普及してしまった。
さらには、
「三密」
などという、まるで非核三原則のような言葉に、勝手につけた造語で言われるようになり、しかも、これがその年の流行語大賞などと言われるから笑わせる。
「安〇ノマスク」
「黒〇基準」
などという政府を皮肉った言葉の方がよほどインパクトがあるのにである。
では令和三年は、さしずめ、
「安心安全」
という言葉であろうか。
当時の首相(これが公開される時は首相が変わっている可能性があるので)が出てきたら、必ず一度は口にする言葉だ。
国民に対してまったく説得力のない、これほどひ弱な首相もいないだろうと思われるほどであり、それこそ、
「東条英機の詰めの垢でも煎じて飲みやがれ」
という国民の声が聞こえてくるほどであった。
利権以外に、国家のために何もしていない首相として、その政治生命の終わりが近いのも明らかであろう。
ほとんどマスゴミの前に出てくることのなかった首相だが、その語録は笑えるものだった。
「別人格」
「仮定の話はできない」
など、完全に逃げているとしか思えない記者会見で、さらに、気に食わなければ、恫喝してみせる。
完全に、負け犬の遠吠えを思わせた。
いくら、
「他に適任者がいない」
というだけの消去法で首相になったというだけに、いかにも、嫌そうに記者会気をしているのを見ると、国民を舐めているとしか思えない。
そんな世の中が、ここ十年近く続いているということ自体が、すでに、
「日本は崩壊している」
と言ってもよいのではないだろうか。
さて、そんな時代だからこそ、民間では政府を当てにしないということで、密かな研究が進むようになった。
そういう意味では、史上最低の内閣も、「貢献」していると言ってもいいかも知れないが、本来なら政府が主導してやるものなのに、文部科学省は一体何をやっているというのだろう。
世の中には、
「開発してはいけない」
と言われる、ある意味、タブーをされているような研究もあったりする。
以前であれば、大量虐殺兵器などがその一つで、国際法で禁止されている兵器もたくさんあるだろう。
毒ガスや核兵器、ナパームやクラスター爆弾など、これらに共通するのは、
「大量無差別」
に繋がるということだ。
大量虐殺に無差別は切っても切り離せない言葉でもある。大量に殺戮するには、無差別になってしまうからだ。
殺害する相手は選ぶことはできない。毒ガスにしても、ガスマスクなどをつけていないと、その近くにいると、死んでしまうのは当たり前のことであり、核兵器もシェルターにでも入っていないと、まともに浴びれば、跡形もなく消えてしまうだろう。
さらに言えることは、もし、生き残ったとしても、恐ろしい後遺症に見舞われることは分かっている。毒ガスを少しでも浴びれば、皮膚がただれたり、生涯消えない障害が残ってしまうことになる。
核兵器などは、シェルターで生き延びたとしても、放射能が消えるまで、シェルターから出ることはできない。出てしまうと、二次被爆を起こしてしまい、ヒロシマ、ナガサキのような深刻な「原爆症」に見舞われてしまうからだ。
何よりも生き残れたとしても、元の世界に戻ることはないだろう。もし地表が残っていたとしても、そこは瓦礫の山であり、放射能による影響がどれほどのものを及ぼすのか、未知数なのだ。
昆虫や動物などが突然変異を起こし、毒サソリなどが怪獣のようになって蔓延っている世界を想像しただけでも恐ろしいではないか。
昭和の頃の冷戦時代に、核戦争で世界が滅びるという映画があったので、レンタルで見たことがあったが、壮絶なものだった。
核兵器の発射ボタンが押されて、サイロからミサイルが飛んでいくシーン、人々が逃げ惑うシーン、さらには、核兵器が飛んでくる寸前に、すべてのエネルギーが消えてしまい、電気は消え、エレベーターは停止し、中は真っ暗、泣き叫ぶ声が聞こえていた。道を走る車のエンジンは切れてしまって、立ち往生。皆これで終わりだと分かっているが車に乗っていた人はたまらず外に脱出し、走り去る。どこを目指すともなしにである。
ピカッと光ったかと思うと、閃光が煌めき、人間の身体がレントゲンのように骨だけが透けて見え、悲鳴とともに、消え去っていく。まるでアニメを見ているようだ。
猛烈な爆破音の痕は、爆風が吹き荒れていた。あちこちで火事が起きるが、誰もどうすることもできずに、二発目が飛んできて、他の都市を破壊している。
地球上には、一五〇〇〇個の核兵器があるといわれる。地球上のすべての都市、さらに全人口三十億の人間を殺傷し、さらに、まだ余る計算になるというほどのものである。もし、そうなれば、地球自体がまともではないだろう。成層圏もなくなり、引力に関係なく、軌道を外れてしまって、どこかの宇宙に飛び出してしまうかも知れない。それだけの核兵器を、人類は所有しているのだ。(ただ、そう言われているだけで、実際にはどうなのか、難しいところではあるが……)
それを思うと、何と恐ろしいことなのだろうと思う。
いくら、抑止力のためだったとはいえ、今までそのことに誰も気付かなったというのもすごいことだ。たとえは悪いが、バブル経済が弾けるまで、その危機に誰も気付かずに、業務拡大を推し進めていたのと、どこかが似ているような気がする。
「きっと世の中って、過去の歴史に学んでいるようで、実際には分かっていないのではないか?」
歴史を好きになれない人がたくさんいるのだから、それも当然のことだろう。
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