ミックスドナッツwithメトロポリス
早乙女次郎
ミックスドナッツwithメトロポリス
「ナッツ」と呼ばれる、ナッツの形状をした違法薬物が、市販の袋詰めミックスナッツに混入され、陸のトラック、海のコンテナ、空のエアプレーンで密輸されているというタレコミが、メトロポリス警察違法麻薬取締班に入ってきた。
メトロポリスという大都市の市場にドラッグが出回る前に、特定の輸送機を炙り出し、街の平和を守るというのが麻取の使命だ。捜査の際、麻取の刑事には動物のパートナーが与えられる。陸路担当は麻薬探知ヴェロキラプトル、海路担当は麻薬探知スピノザウルス、そして空路担当は麻薬探知プテラノドン。
空路担当に配属された主人公トモヤは、プテラノドンのプー太と共に仕事をすることになる。職員は職務の中でパートナーとの絆を深める必要がある。
新人であるため、悪を裁こうと張り切っていたトモヤであったが、肝心のプー太がなかなか懐いてくれない。トモヤがプー太の背中に乗っても、プー太は空中で縦に一回転してトモヤを振り落とす。
「捨てられとったんぢゃよ。」
飼育員のおじいさんがトモヤに教える。
「プー太は捨てプテラノドンでな。誰かに森の奥に捨てられとったのを、ワシが見つけて保護したんじゃ。その子はワシにしか懐かんよ。“コツ”を教えてやってもいいがのぉ。その代わり、、、」
「知りてえよ!じいさん!その代わり、、、?」
「ワシに人権をおくれ。国に仕えるお前さんが申請してくれさえすれば、ワシは国から人として扱われることがデキるんぢゃ。もうあんな所で暮らしとうない、、、」
「了解したぜ、じいさん。俺がこいつと一緒に悪人をとっ捕まえて、じいさんを一端の人間にしてやるぜ!」
「神よ、、、この勇敢な青年に祝福あれ、、、」
プー太と互いの額を合わせて暫くすると、プー太はすっかりトモヤに懐いてしまった。
「俺の気持ちが額を通して通じたんだ!じいさんの言った通りだぜ!行くぞ、プー太!極悪人どもをぶっ潰すんだ!」
プー太の背中に乗り、優雅に滑空するトモヤ。プー太が例のエアプレーンを見つけ出し、それに向かって飛ぶ。飛行機の鉄砲狭間が開き、ギャング達がトモヤ達目掛けて銃を乱射。プー太に一発命中。プー太は力を振り絞り、空中で縦に一回転してトモヤを飛行機の片翼に放り出し、着地させる。
「プー太ァァァァ」
ボン! プー太はエンジンに巻き込まれて散った。
怒り狂ったトモヤは、落ちゆく飛行機の上で『ミッションインポッシブル』並のアクションをかまし、見事ギャングを捕まえ、「ナッツ」を取り締まった。
騒動が落ち着き、トモヤは異例の2回級昇進。2本の表彰旗が贈られた。トモヤのと、宇宙一勇敢なプテラノドン、プー太のだ。
「やったぜ、じいさん。じいさんの人権が議会で認められた。故郷に帰るんだってな、よかったな。でも、、、プー太は、、、」
「お前さんはよくやった。プー太も久々に人を背中に乗せることがデキて幸せだったぢゃろうて。でもな、青年。お前さんは「悪人」を倒すことに躍起になっておったが、見極めねばならん。本当の「悪人」は何処のどいつか、、、」
じいさんはその背中しか見せなかった。リニアのドアが閉まり、日本に向けて出発した。
ミックスドナッツwithメトロポリス 早乙女次郎 @saotomejirou9090
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