漂流🎀りりな🎀

漂流🎀りりな🎀

　「green green grass 」をバックミュージックに、脚立に設置したスマホの内カメの前で小降りに踊る少女は🎀りりな🎀(本名　副島里奈)、現在高校2年生、TikTokerである。フォロワーは754人。

　8/11の誕生日、今日も今日とてスマホ片手にぶりぶり。すると母親が突然、

「里奈、今日誕生日でしょ？ジャジャーン！船を買ったの！お父さんと一緒に向こうの海でクルージングしましょ！」

どでかい庭の上で父親の車に引き摺られる小型クルーズ船。しかし里奈こと🎀りりな🎀には、画面の向こうで動画を待っているリスナーたちの要望に応える責務がある。船でブイブイ言わせてる場合ぢゃないのん！

「え〜、私いかな〜い。海って思ったよりしょっぱいしぃ、砂で身体汚れんぢゃ〜ん、この前も洗い流すの大変だったしぃ、」

「なーに言ってんだ、里奈。高かったんだぞぉ、これ。」

「そうよ、里奈。それに、海でそのぉ、テックトクとか言うのを撮ればいいじゃない。もう映え映えの映えよ！」

🎀りりな🎀に電流走る。早速海へ向かう副島家御一行。海の上をクルーズでブイブイ、真正面から衝突するマッコウクジラ、大破する船、大海に放り出され、とある島の砂浜に打ち上げられる🎀りりな🎀。その右手にはスマートフォンだけが握られていた。

「どこよ、ここ､､､まさか､､､無人島に漂流しちゃった⁉️ぴえ〜ん🥺お気にの水着が汚れちゃう〜ん」

🎀りりな🎀の過酷なサバイバル生活がスタート。

　最初は明日を生きるのに必死だった🎀りりな🎀だが、月日が流れその生活にも慣れると、次第に自然の雄大さ、美しさに魅了されて行く。

「あの星と、あの星とあの星を繋げて､､､できた！タピオカ座🧋､､､ふふ、正座ってこうやってできてたんだ♫」

砂浜に寝転んで星座を作る🎀りりな🎀に忍び寄る影。熊、そう熊である！

　夜明け、太陽が島の浜辺を照らし始める。そこにあるのは、見るも無惨になれ果ててしまった🎀りりな🎀の姿のみであった。