私は主人公じゃないけど

おいでよ

私は主人公じゃないけど

春風をまとって走る君が好き 私は主人公じゃないけど


タンポポの綿毛を一つ抜いたとて誰かと同じで気付かれません


あの花のことを忘れるくらいなら私のことも忘れて欲しい


月暈が私を責めるふりをして路傍の花を優しく照らす


ペン立ての底にたまった消しゴムのカスを集めたような初恋


初夏の優しい風が背を撫でて君の匂いを攫って消えた


月光の真似事をする誘蛾灯みたいな日々をいつまでやるか


優しさが私の型を定義して軽口の言い方も忘れた


もし君に一度だけでもなれたならとびきりめかし込んで死にたい


「こいつやだ」「わたしもやだよ」席替えで起こる争い後ろの私


窓際に君が座っているからか色なき風も色付いている


誰にでも振りまく笑顔に撃ち抜かれ石像になり砕け散りたい


シャーペンの芯をひたすらノックして折れたやつらで打ち上げに行く


怪獣とウルトラマンが戦って壊れたビルが私の比喩です


生きづらい誰かのための応援歌 虫の音みたく聞くだけでいい


木枯らしが君の両手をポケットに送り込ませるのが冬の季語


野球とかルール全然知らんけどそんなに目がキラキラするんだ


大柄な男子が前の席にいて遠回りするストーブの熱


頑張って掴もうとするふりをして掴めぬことに安心してる


雑草という名の草がないように「犬デカ。ごめん、どこまで言った?」



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私は主人公じゃないけど おいでよ @oideyo

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