12
……やがて、龍子の見ている前で、その白い蛇に最後のときが訪れた。
その白い蛇の最後のときは、とてもわかりやすい形で訪れた。動物や爬虫類(つまり蛇)にあまり詳しくない龍子でも一目でわかった。
なぜなら、その白い蛇の全身に、いきなり、『美しく燃える赤い炎』がともったからだった。
その突然出現した炎は、白い蛇の全身を焼いた。
白い蛇は炎の中でばたばたと悶え苦しんでいた。(さっきまでぴくりとも動かなかったのが、変に思うくらいにばたばたとそれは美しい炎の中でもがいた)
綺麗。
龍子はそんな燃える白い蛇の姿が美しいと思った。
その美しい炎は、白い蛇の体を焼き続けた。不思議と、なぜか炎は白い蛇のことを苦しめるだけで、その体を真っ黒な炭になるまで、燃やし尽くすことはなかった。
龍子は真っ暗な闇の中に両足を両手で抱えるようにして、しゃがみ込んだ。
そこから龍子は白い蛇が美しい炎の中でもがき苦しんでいる姿を、しばらくの間、じっとそこから観察していた。
このとき、……龍子自身は気がついてなかったのだけど、龍子はずっと、闇の中で楽しそうに笑っていた。
龍子自身にはその龍子の笑顔は、見ることはできなかったのだけど、炎の明りに照らされた橙色の光を反射している、その顔は確かに笑っていた。
龍子がずっと自分を見て笑っていることに、燃える炎の中にいる白い蛇の赤い目には確かに、はっきりと、確認することができた。
……それを確認して、白い蛇は、その赤い二つの目から、透明な、とても澄んだ色をした清らかな、涙を流した。
……その涙で、龍子の世界は『浄化』された。
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