9
龍子は真っ暗な闇の中で目を覚ました。
それから龍子は自分がどうしてこんなところにひとりぼっちでいるのかを思い出してみる。
……そうだ。
私は美鷹ちゃんを探して、この森の中にやってきたんだっけ。(そして間抜けなことに、地面に空いていた大きな穴の中に落っこちたのだった)
そんなことを思い出して龍子は笑う。
「よいしょっと」
そう言って龍子は重い身体を持ち上げる。(体は本当に重かった。それから、なんとなく上を見ると何故か自分の落ちてきた穴の光を見つけることはできなかった)
きょろきょろと周囲の風景を見渡してみる。
でも、なにもない。
ここにはただの深い闇が存在しているだけだった。
……美鷹ちゃん。
どこにいるの?
龍子は当てもなく闇の中を歩き出した。
自分の手を見ると、その手の指の先は、もう『人間ではなくなっていた』。
そこにあったのは『黒い鱗で覆われている化け物の指』だった。
……黒い蛇の指。
その指を見て龍子は思う。
私はもうすぐ黒い蛇になってしまう。
一匹のなんの感情も、言葉も持たない、一匹の蛇になってしまう。
人間ではなくなってしまう。
だから、その前に美鷹に会わなくてはいけないんだ。
自分の大切な目的を思い出して、龍子は強く歩みを進める。
龍子の進む真っ暗な闇の中に光はない。
それでも龍子は進む。
ただ、前に。
……前に向かって。
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