7 蛇の脱皮

 蛇の脱皮


 よく見ると自分の手の指や手の皮が剥けていた。

 その皮の剥けている自分の手を見て龍子は『これは蛇の脱皮だ』と思った。

 あるいは自分の成長の証なのかもしれないと思った。

 これから私は新しい自分に生まれかわるのだと思った。……このすごく辛くて苦しくて、大変な試練の旅を通して。 

 そんなことを思ってしばらくの間、龍子は自分の頼りない小さな手のひらを見ながら、暗くなり始めた森の中でじっとしていた。

 龍子がそうやって自分の手のひらを観察していると、そこに、手の皮が剥けていることとは違う、もう一つの変化を見つけることができた。

 それは『鱗』だった。

 自分の指の先の辺りの皮が黒い鱗に変わっていた。

 その黒い鱗を見て、これは『蛇の鱗』だと龍子は思った。

 ……変化は私が思っている以上に早く訪れている。

 私が完全に『本物の黒い蛇』になってしまう前に私は美鷹に会わなくてはいけない。

 美鷹にあって、(人間じゃなくなってしまって、私が言葉を失ってしまう前に)ちゃんと自分の気持ちを美鷹に伝えなくてはいけない。

 龍子はずっと下に向けていた顔を上げて空を見上げる。

 いつの間にか、(本当にあっという間に)真っ暗になってしまった暗い空。

 そんな真っ暗な星の見えない夜の空を見て、……美鷹ちゃん、今頃なにしているのかな? とそんなことを龍子は思った。

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