魔王は勇者に勇者は魔王に

灰雪あられ

第1話 あっても嬉しいなくても嬉しい


妖精たちは自由で気まま。

魔王になる子と勇者になる子、入れ替えたらどうなるだろう。

ただ、ただ単に面白そう。

そんな理由で入れ替えた。


…………


「お母さま、なぜ僕のコブは尖ってるいるのか?」


アレックス少年5歳、母に聞く。

母・マリーはフッと笑った。


「それはね、特に理由なんてないのよ」


アレックス少年はクフフツと笑った。

もう定番の会話である。 


「いい?アレック」


そして何度も母は言う。


「理由なんて後からいくらでも作れるわ」

「大切なのはどうあるかよりもどうするかよ」


俗にそれをツノと言う。


「でもどうあるかだって大切だから、帽子で隠しときましょうね」

「ああ、そうだな」


アレックス少年は帽子をしっかり被り、庭の探検に出かけた。


…………


「マミー、どうして僕のツノはペッタンコ?」


ビクター少年5歳、母に聞く。

母・バリーはイヤっと叫んだ。


「ビ・ク・ター!今度は誰の枕取ってきたの⁈」


ビクター少年はンフフッと笑う。

もう定番の会話である。


「いい?ビクター」


そして何度も母は言う。


「ツノがあったって枕は使えるのよ」

「枕に刺さってないかより、勝手に持ってくる方が問題よ」


俗にそれを盗みと言う。


「でもこの際だから洗ってしまいましょう。理由なんて後からいくらでもつけられるわ」

「え〜パピー洗濯嫌いなのに」


ビクター少年は嬉々として母の後を歩いて行った。

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