この世界のひた向きなすべての三姉妹に捧ぐ

優たろう

第1話

 人知れず一筋の雨粒がアスファルトの路面に落ちる。

 1つ、2つ、3つ…数えている間に雨粒が雨にかわり、やがて数えられなくなった。

 こんなことなら、傘を持ってくればよかったな。

 ロータリーで待ち合わせをしていたカップルの片割れは電話をしながら駅ナカのカフェに移動し、居酒屋を探していたサラリーマンは家路を急ぎ、路上ミュージシャンの子はキーボードをバックに片付けさらに大きなビニール袋に包んでいる。

 天気予報では19時に降りはじめて明日の朝まで降り続くとのこと。降りはじめは予報より少し早いが、待っていても止みそうにはない。

 傘を買って帰るか、濡れながら帰るかの2択しかないのに、一歩踏み出すのが遅い。

 えいって踏み出すのが、苦手だった。いつも。


 私たちの物語はいつも雨の日ばかりだ。

 そして今回ももれなく、強く雨の降る夜からはじまる。


 この日本には何百万人かの学生がいて、その中の何百人かは不登校になっている。私もどこにでもいるその中の一人でしかない。

 結論から言えば、これは私が大学に行けなくなってから今までの話だ。

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