第143話 人類至上派の首脳部。

 ―――時間は少し戻ってレギオン発生時。これを指示した人類至上派の上層部の後のやることは一つだけだった。


「よし!逃げるぞ!!王都の金目の物を全て持ってこい!金さえあれば隣国だろうがどこだろうが受け入れてくれる!兵士たちは我々の護衛をしろ!!」


 そう、それはさっさとこの場から逃げる事である。この場に留まっていれば戦犯として処刑されるのは目に見えている。例え受け入れてくれないと言えど、それは同じ人類至上派だけである。

 金を持ち込んで金で頬を叩けば喜んで受け入れてくれる………と彼らは思いこんでいる。レギオンを放ったのも、あくまでこちらを狙ってくる者たちへと足止めである。

 だが、そうなると当然出てくる問題は………。


「ま、待ってください!!今我々の兵士は皆様を守ろうと戦っています!!

 人類の底力を信じるのが人類至上派の本懐なのではないのですか!!戦っている兵士を見捨てて自分たちだけ逃げようというのですか!!」


 その兵士の言葉に、彼らは何の迷いもなく一斉に喚きたてる。


「そうだ!!お前たちは我々を守るための盾にすぎん!!そんなお前たちが我々のために戦うのは当然だろう!!」


「あんな怪物どもに人間が勝てるはずない!!せっかく怪物どもを根こそぎ叩き潰せるための力を求めていたのに………。クズの怪物どもめ!!ここは捲土重来だ!戦略的撤退は罪ではない!また再び力を蓄えて舞い戻ってくれる!!」


 そんな好き勝手な事を次々と吐き捨てる上層部に対して、兵士はついに切れて上層部の人々に怨嗟の声を吐き捨てる。


「アンタらは………人間のクズだな!!何が人類のためだ!ただの私利私欲と欲望のためじゃないか!!俺たちはこんなクズのろくでなしどものために戦っていたのか!!」


 こんな奴ら守る気などとっくの昔に尽きた。もうやっていられるか、と思いながら兵士が逃げようと思っていた瞬間、彼の足が止まる。


「ぐ………。がぁああ………!!」


 脳内の魔術針が作用し、彼の目や口などあらゆる箇所から血を吹き出し、瞬時に兵士は死亡した。自分たちに生意気な口を叩く無礼者を生かしておくほど、彼らは寛容ではなかった。


「兵士どもの魔術針を起動させろ!我々に絶対服従の奴隷へと変貌されるのだ!!

 急げ!!ありったけの宝石や金銀財宝をかき集めろ!我々の生存こそが何よりも優先されるのだ!急げ!!」


 その言葉に、奴隷と化した兵士たちは、のろのろとゾンビのようになりながら言われた仕事を行うことになった。レギオンで大混乱している今のうちに王都から脱出する。それが首脳陣の企みだった。

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