第127話 王都攻防戦1
『ただいま~。何とか帰ったよ~。』
エルはそのままユリアを抱えたまま、ティフォーネと共に辺境伯軍の元へと帰還していった。
そして、そんな彼らを出迎えるのは、辺境伯軍の大歓声だった。
それも当然だろう。敵の飛行要塞を叩き落としたヒーローたちだからだ。
いかに元はこの国を象徴する神の武器と言っても、敵によって支配下に置かれた兵器を破壊したとあっては、彼らが盛り上がるのも当然だった。だが、その歓声に包まれても、エルの気持ちは晴れなかった。
『まあ、ミストルティンを叩き潰したのは師匠だし我じゃないからなぁ……。』
ともあれ、彼らは辺境伯軍と合流する事になった。未だに眠っているユリアを魔術師たちに預けるエル。魔術師たちに徹底的に思考、身体的な異変について調べてもらう予定である。
そして、エルたち自身はこの機を逃さずに王都奪回を行わなくてはならない。
だが、今辺境伯軍が駐留しているのは、王国の半ばほどの街になる。いかにミストルティンが大爆笑したのは森の中とはいえ、その影響により、王都までの道がどうなっているか不明である。
きちんと道を調べて、兵站を整えて攻めこむ。それが王道の戦略である。だが……。
《助けてぇええ!奴ら人間狩り初めやがった!!》
《あいつらレジスタンスとか家族を根こそぎ連れ去って人体実験していやがる!!》
そして、そんな状況が隠し撮りをさせた状況の配信活動でどんどん流されてくるのだ。
さすがの辺境伯でもこれは放置できなかった。
辺境伯ルーシアは慌てて、エルやティフォーネに助けを求めたのである。
「……と言うわけで我々は体制が整うまで動けない。君たちなら空路からの強襲も可能なはずた。何とか……頼みたい。」
辺境伯ルーシアはそう言いながら、エルたちに頭を下げる。
彼女としても早く王都に向かいたいのだが、これも苦肉の策なのだろう。
それに対して、ティフォーネは軽く肩を竦めてそれを断る。
「今回は特別に力は貸しましたが、その程度は弟子自身が何とかすべきでしょう。そんな事に手を貸す義理はないですし。」
確かにミストルティンは、エルの手に余るからこそ、ティフォーネが手を貸したのだ。
この程度、エル自身が何とかしろ、というのが彼女の考えである。
『……解った。だけど、ワイバーンたち……使役竜は使ってもいいんだな?』
その言葉にティフォーネは頷いた。ルーシアからしたら、王都の占拠というより、電撃的奇襲をかけて戦力を削ぐ事をメインにしてもらいたいらしい。
エルは、休む暇もなく王都へと向かう事になった。
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