第117話 中央指令室での戦い。

『返しにもらいに来たぞ!!俺の仲間を!!』


 あちらこちらから火花や迸る魔力が支配する中央指令室にいる牙を剥き出しながら叫ぶエルに対して、教授はノインを庇うように前に進み出る。

 だが、正直エルにとってこの二人はどうでもいい。彼の目的はユリアだけである。

 ユリアさえ回収できれば、後はさっさとここから逃げ出すだけの話だ。

 頭にケーブルのついた王冠のような物を被せられながらぐったりしているユリア。

 恐らく、ミストルティンの頭脳としての役割を持たせられていたのだろう。

 エルとしてはユリアさえ救い出されればそれでいい。

 どうせ、こいつらはミストルティンの爆発に巻き込まれるか何か死亡するだろう。

 こんな奴らに構っている暇はない、というのがエルの考えである。


「なるほど……。わざわざ実験体を救いに来たのか。ご苦労なことだ。」


『さっさと彼女を開放しろ。そうすればお前らは見逃してやらんでもない。』


(どうせ死ぬだろうしな。それよりはユリアのほうが大事だ。)とエルは考えているが、教授はそんなエルの言葉に対して、鉄杖をエルに向けて断りの台詞を放つ。


「悪いがこちらも仕事でな。彼女を死なせるわけにはいかない。人類至上派に逆らえば、ノインの命がなくなるのでな。俺は、彼女を守る。悪鬼外道と言われてもな。」


 そう言いながら、教授の鉄杖から魔力の刃が展開してエルへと向けられる。

 彼も彼なりにノインを愛しているらしいのは伝わってくる。だが、そんなことはエルには関係ない。とにかくユリアさえ取り戻せばいいのだ。

 だが、この狭いところで元の姿に戻ってしまえば、身動きが取れなくなるのは明白である。ならば、この小さい1mほどの姿で教授と戦うしかない。

 見たところ老齢の彼ではあるが、魔術師が油断ならないのは知っている。

 こちらも爪に魔力を込めて迎撃態勢に入るが、彼は老齢とは思えないほどの速度でこちらの距離を瞬時に詰めるとその魔力の刃を振るう。


『———ッ!!』


 エルはとっさに魔力を纏わせた爪で迎撃を行い、何とかその魔力の刃をはじき返す。

 さらに、それを防ぐために石壁作成を行い、防御と彼に対する目くらましを同時に行おうとする。


『石壁作成ッ!!』


 だが、教授はフェンシング……レイピアのように魔力の刃を纏わせた鉄杖を突きに石壁に叩き込み、まるで布切れのようにいともあっさりと石壁を貫通させる。

 石壁の影に隠れていればいい、と考えていたエルは、あっさりと石壁を貫通されて飛び出てきた鉄杖の先端に流石に驚いた。

 さらに、教授は連続の突きで、いともあっさりと石壁を何十回も貫通させ、石壁をボロボロにして使い物にさせなくさせる。

 そんなんありかよ!!と驚いているエルに対して、教授はさらに襲い掛かっていった。

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