第94話 起動実験成功。
様々な制御関係からの警告音が響き渡りながらも、ノインはそれらを全て無視しながらミストルティンに思念を放つ。
そして、その思念に呼応して、数百メートルもの巨体を誇る神弓ミストルティンは、各種スラスターから魔力噴射を行い、ゆっくりと移動を開始した。
それに対して、見ながら内部や外部の人類至上派たちも一斉に歓声に上げる。
この神から与えられた武器、移動要塞さえあれば我々の大きな力になるだろう。
小賢しい保守派や辺境伯どもなど一網打尽だ!!
そんな気炎を上げる彼らだが、それを操縦しているノインの負担は途轍もなかった。
人間一人で巨大要塞の操縦を行うとなれば、その負担の大きさは当然途方もない事になる。本来ならば、要塞の様々な補助機構がそれをカバーするために働くのだが、不正なやり方で半ば無理矢理動かしている今の状態では、各種部分の警告音の嵐でまともに補助装置が動くはずもない。
それら全てを切って無理矢理人間だけで動かそうと思っても大きな負担になる。少し動かしただけでも、ノインの瞳が充血してそこから血の涙が流れるほどなのだ。
「……よし、もういい。起動実験は終了だ。動かせると分かっただけで十分だ。」
「で、でもおじ様!!私はもっと……!!」
「いや、起動実験が成功しただけでも十分だ。だがお前にかかる負荷が予想より遥かに大きすぎる。これ以上は認めるわけにはいかん。こちらで軽減方法を考えよう。
おとなしく従え。」
その教授の言葉に、ノインは渋々と従い、ミストルティンを停止させる。
他の兵士たちは大騒ぎで宴会状態になりつつある中、教授は回復魔術で回復させて意識を取り戻したユリアを兵士に命じて部屋へと戻そうとする。
「そ、その前に聞かせて。あなたは人間の複製体なんて作っていいと思っているの?というか、そもそも貴方は一体なにをしようとしているの!?」
そのユリアに対して、ノインは怒り心頭と言わんばかりにふらふらの肉体を無理矢理立たせてユリアのところへと向かおうとする。恐らく、彼女を殴りつけようとしているのを察知した兵士たちは、皆それを止めに入る。
「黙れ!クソ女が!!幸福に暮らしてきたお前に叔父様の何が分かる!!叔父様は私たちを救おうと努力してくれているんだ!お前のようなクソ女は黙っていろ!!」
兵士たちに止められながら、ノインはユリアに対して般若もかくやも表情で叫ぶが、それも教授のかつん、と鉄杖を突いた音でたちまち静かになる。
その一瞬の沈黙の中、教授は静かに答えた。
「私が何をしようとしていると言ったな。……仕事だ。単なる仕事をしているにすぎん。ただそれだけのことだ。」
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まだ体調が回復しきっていないのですみません。
それでも今日も更新できたワイは凄い。(自画自賛)
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