第89話 人類至上派の現状。
さて、一方の人類至上派だったが、プロパガンダ戦略も周辺の貴族を引き入れるのも今一上手く行っていなかった。
周辺の貴族からはクーデターで地位を奪い取ったという地点で仲良くなれるはずもないのに、何をトチ狂ったのか王家の人々すら葬り去り(彼らの視点)それにもまして、「人類は皆平等!!我々人類こそ世界の頂点に立つべき!」という人類平等説は貴族にとって極めて目障りな思想だった。
それは貴族こそが偉い存在である!という貴族主義とは水と油であり、貴族たちはそれを面白くない、と思いつつも、様子見を伺っていたのである。
だが、保守派……辺境伯にして選帝侯であるルーシアが王家の末裔を自称する女性を担ぎ上げたのをきっかけに、目利きのいい中立派の貴族たちはどんどんあちら側へと流れ込んでいった。
「ええい忌々しい!!なぜ我々の崇高な信念を理解できんのだ!!あいつらも同じ人類だろう!!」
「だが、朗報もある。実験体Uの血液から魔術的クローンを生み出せることに成功した。これで血液の問題もなくなった。ミストルティン起動さえできれば我々の勝ちだ!!」
おおおお!!とその場にいる人間は一斉に歓声を上げた。大量のクローンさえあればミストルティン起動の神血の問題は解消される。
後はこのクローン……もとい血袋たちから血を絞りつくせばいいだけの話だ。
どうも研究の結果忌々しい竜の血によって神血の効果が低下してしまっているらしい。さらにそこに劣化クローンである血袋たちではやはり質が低下してしまうのは致し方ないことだろう。
「それにはいい案があります。血袋どもと他の生き残りの王族の分派どもを交わせればいいのです。それで血の薄さはカバーできるのでは?」
「それには時間もかかりますし、クソ下らない倫理観とやらに反するようですからな。全く公開処刑を娯楽にしているくせに我々に対して倫理観を語るとは……どの口で語っているのか!!ともあれ、それは人工授精で行ってみましょう。」
「洗脳強化型兵士の育成も順調です。これらが大量生産が行われたのなら、人間の兵士ごとき粉みじんですぞ!!怪物と亜人の融合型生体兵器も現在研究中じゃ。これらの大量生産が成功すれば、あやつらの兵士ごときはたちまち踏みつぶせましょうぞ!!」
「後は提案があるのですが、実験体Uのクローンを促成栽培して、王家の血を引く存在として我々の旗頭に仕立て上げればいいのです。もちろん、徹底的に洗脳術式など施して完全に我々のいうことを聞いてくれる旗印を。民衆は単純なものですから、それで簡単に騙されてくれるでしょう!!」
おおおお!!とその場の皆はその提案に立ちあがって拍手を行った。
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