第59話 ブービートラップ
腐敗竜の肉体、削ぎ落ちた肉の破片から生まれた小型腐敗竜。
小型……2メートルほどの大きさをした小型腐敗竜たちは森の中を歩きながら侵攻を開始する。
踏み荒らされる草や大地は彼らの手によって腐敗させられ、腐敗の道を作りながら彼らは歩んでいく。だが、その歩みは明らかにおかしかった。
多少の障害物、つまり木々を回避する程度の知恵はあるが、ただ真っすぐ歩み、目の前の動物や魔物たちを排除していくだけ。
そこには知性の欠片も存在しなかった。そして、それをアヴリルの使い魔の視線で見ていたドワーフたちは瞬時に結論を下した。
「よし解った!!こいつらバカだ!!」
使い魔の視点をアヴリルから見たドワーフたちは、瞬時にそう判断した。
腐敗竜本体は不明だが、そこから生まれ出た分身たちには知性の欠片もない。
ただ野生の本能のみで暴れまわっているだけである。そういうケダモノを仕留めるためには、やはり罠である。
「急ぐぞ!!奴らを倒すために罠におびき寄せるんだ!!」
この森の近くにはエルフたちは存在していない。それは腐敗竜の復活を恐れ、エルフたちがこの森周囲には立ち入らないようにしていたからだ。
エルフたちからしてみれば、ここらへんは禁忌の森と言ってもいい。
だが、その分、エルフたちを気にすることなく、ドワーフたちはこの森を好き勝手にできるというものである。
そして、小型腐敗竜はドワーフたちが作り出した罠に次々とひっかかっていた。
大型獣用の落とし穴を回避することなく、そのまま落とし穴にはまり込んだり、わざと簡易的に作った脆い橋の上を通る事により、そのまま橋が落ちて川の中にある木の槍に串刺しになったり、ドワーフたちが仕掛けた左右からの丸太の鉄槌によって叩き潰されるなど、面白いように罠にかかっていく。
だが、それでも彼らは、落とし穴から這い上がったり、川に落とされた瞬間、その腐る肉が川に流れ込み、大量の魚たちが死亡したり、左右の丸太によって叩き潰されたのも、丸太自体が腐り果てていき、滴った肉汁によって大地も腐敗していく。
試しに、聖水なども遠距離からかけてみたが、ゾンビではなく、”生きている”腐敗竜には聖水なども通用しないのが、ドラゴンゾンビよりもさらに厄介なことを物語っている。
「いいか!近寄るな!絶対に近寄るなよ!!遠距離からの攻撃に専念しろ!!」
かの獰猛で鳴らしたドワーフたちですら、クロスボウやらの遠距離攻撃で腐敗竜に対して攻撃を仕掛けている。あの地面や川の惨状を見れば、あんな怪物と近接戦闘など行えないのがはっきりと理解できる。
『うぉおおお!食らえ!《重力魔術》ッ!!』
そんな彼らに対して、再び大型化したエルは、小型腐敗竜に対して数体纏めて重力魔術で押しつぶしていく。
極めて柔らかい腐敗した肉に対して、エルの重力魔術による押しつぶしは極めて有効なのだ。小型の腐敗竜はおぞましい音を立てながら次々と押しつぶされていく。
だが、それによる腐敗の空気までは防ぐことができない。だが、その瞬間、一陣の爽やかな風が腐敗の空気を切り裂くように吹き抜けた。
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