第50話 さらなる竜血を。



『うう……、疲れた……。しばらくゆっくり休んでええか……?』


 何とかひぃひぃ言いながら自分の拠点に帰ってきたエルは、自分の部屋に帰ってアヴリルを読んで《小治癒》で自分の爪や鱗を治させてもらう。

 これぐらいの傷ならばこの程度の治癒魔術で何とかなるだろう。

 しかし、これで自分たちの欠点がある程度明らかになってきた。

 まずは「治癒魔術の使い手がいない」ということ。これは冒険者にとっては致命的といってもいい。

 そこで、ユリアはアヴリルに対して言葉を放つ。


「すみません。アヴリルさん。私にも治癒魔術を教えてもらえますか?

 これから先、治癒魔術は必須になりそうですので。」


 深刻な顔をしながら、ユリアはアヴリルに対して言葉を放つ。

 無敵だと信じていた竜ですら傷つく。ごくごく当たり前の事実ではあるが、実際に目の前で見るとショックが大きかったのだ。今までも自分なりに力になっているが、もっと力になりたい、という思いが彼女の中で膨れ上がってきているのである。


「いいですよ~!ついでに何か有用な魔術も教えちゃいますか。魔術師としての階位も上げておいたほうがいいですかね。ん~「2=9 理論者(セオリカス)」ってところでしょうか。バンバン上げちゃいましょう!天才の私の指導なら大丈夫なはずです!」


 えへん!と胸を張って答えるアヴリルだが、彼女に対してユリアは据わった目をしたまま彼女に対して詰め寄っていく。


「ところで……。竜様にも効く媚薬などは作ることはできるのですか?」


「えっ!?う、うーん。そう来るとはさすがに私も予想外だったなぁ……。

 まあ、人と竜のままだとあれですし……。とりあえず修行から始めましょうか!!まずは一週間間ぐらい……。えっ?そんなに余裕はない?困ったなぁ……。」


 そこで、彼女はエルの爪を剥がれた部分を見て、そうだ、と思いつく。


「どうせなら、さらに体に竜血を入れてみるというのはどうですか?人間から離れますが、さらにすぐに強くなれますよ?まあ、当然さらに怪物へと近づくという事になりますが……。それに貴女の体が耐えきれるかどうかも……。」


「やります。(即答)」


 即答で答えるユリアに対してレイアだけでなく、視聴者の皆からも一斉にコメントが飛んでくる。


《ちょ!!ユリアちゃん即答すぎるでしょ!!》

《やめろぉおおお!!人間を捨てるなぁああ!!》

《脳破壊されるぅううううう!!》


「姉さん!いくら何でもさらに人間以外の存在になるのは……!」


 そんな彼ら彼女たちに対して、ユリアは敢然と胸を張りながら彼らを強い視線で見返しながら答えを返す。


「だから何だというのですか!!今まで私たちは竜様の力に庇われてここまでやってこれました!その竜様のお力になりたいになるのに何が悪いんですか!!」


 そのユリアの剣幕に、コメントもレイアも思わず言葉を失い黙り込む。彼女たちも自分たちなりに力になっていたが、それでも自分たちが庇われていたことには変わりない。そんな竜に一歩でも近づきたいと思うのは自然だろう。


「……分かりました。それだけの覚悟があるのならやってみましょう。

ただし、人間には人間である以上キャパシティーがあります。それを超えるということは非常に危険だということは知っておいてください。」


その言葉に、ユリアはこくりと頷いた。



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