第36話 ゴブリンたちの逆襲1
さて、何だかんだで繁栄しつつある大迷宮周辺だったが、それを面白くない目で見ている存在がいた。
それは人類至上派もそうではあるが、そうでない存在……つまり怪物、ゴブリンたちである。今まで好き勝手村を襲って略奪し、女をさらい孕み袋にできたのに、あの竜のせいでこちらの勢力は大ダメージを負った上に、孕み袋もほぼ全滅。
逆に向こうの村は大きく発達し、大迷宮も人々も多く入り込んでいる。
だが、村の外に出る者たちは腕自慢の冒険者か、それなりの護衛手段を持っているものたちだ。
お得意のゴブリンの集団戦術も、数が少なくなってしまっている今では返り討ちに会いかねない。彼らは歯噛みしながら絶好の略奪地を眺めるだけだった。
だが、今は違う。彼らも魔術で自分たち自身を改造して新しい力を身に着けたのだ。。ゴブリンやオーガ等の存在は、悪妖精、アンシーリーコートと言われる存在である。その属性を利用し、同じゴブリンと同士討ちし、その肉を貪り食ってさらに悪妖精として進化したのである。
「血を!血を!血を捧げろぉおお!!」
長く薄気味悪い髪、燃えるような赤い眼、突き出た歯に、鋭い鉤爪を具えた、醜悪で背の低い老人の姿。そう、それは妖精族『レッドギャップ』と呼ばれる存在だった。彼らはその帽子を人間の血で赤く染めることを目的にしている。
さらにもう数体の巨人、巨体でギラギラと輝く瞳、その凶悪極まりない容貌『グレンデル』であった。
グレンデルの最も厄介なところは、音もなく俊敏に忍び寄り、暗闇の中に溶け込む厄介な技能を得ている。この暗闇の中に溶け込む能力は、エルの作り出した地脈結界すらすり抜けるという能力を有している。
つまり、夜間にこそ最大の能力を有しているのだ。さらに、彼らの肉体は人間たちの刃物などは通じないという特殊能力を持っている。
これならば、あの忌々しいドラゴンの結界をすり抜けていくことができるはずだ。
内部に入り込んで、好き勝手に残虐する。それが彼らの目的だった。
そして、それを行うために、戦力を整えた彼らは、グレンデルの力を最大限に高める真夜中に、開拓村ガリアへと侵攻を開始したのだ。
「クソッ!久しぶりに来やがったか!!」
「竜様の防壁を信じろ!!こちらには結界もある!おびえるな!!」
金を探し出すための鉱山夫すら導入して、彼らはガリアへと近づいてくるゴブリンたちを迎撃する。こんなこともあろうかと、ガリアの周辺を覆う石壁の上には、様々な攻撃兵器などが装備されている。
それらの兵器により、遠くのゴブリンたちは弓矢の雨などを受け、あるいは石を落とされて潰されていく。
「……ん?何か魔術式がおかしいですね~。」
そんな中、何か妙な魔術式を感じ取ったアヴリルは、ふと外壁の結界近くにまで近づいていく。竜の作り出した結界があるから大丈夫だろうとはいえ、それをすり抜けてくるような妙な魔術式を感じ取ったのである。
魔術師である彼女は、魔力の流れを読み取ることに長けているのだ。
「ん~《霊気感知》!《魔術感知》!!」
何か妙な魔力の流れを感知した彼女は、より詳しく調べるために感知魔術で読み取るが、結界をすり抜けて何かが来ている?程度にしか感じられない。
何かよくわからないけど、変なのが来てるのを放置するのもアレだし、とりあえず一当てしておくか~と彼女は、魔力の乱れに対して、魔術の矢を連発して次々と叩き込んでいく。
「何かよくわからんけど食らえッ!《魔法の矢(マジックミサイル)》ッ!!」
それが魔力の乱れに命中した瞬間、そこから巨大なオーガにも似た存在が現れた。
鋭い爪に強靭な肉体、飢えた瞳をしたその怪物は、ゴブリンが変化した
「う、うぁああああ!!か、怪物だぁあああ!!怪物が入り込んでいるぞぉおお!!」
それを見て、結界&石壁内部に怪物が入り込んでいると知った皆は大パニックに陥ることになってしまったのだ。
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