第35話 鉱脈採掘と鉱毒防止

『お久~どう?そっちは上手くいってる?』


 傷を癒したエルは、念のためしばらくダンジョン攻略を休むことになり、再び開拓村ガリアへと訪れていた。金鉱脈が発見されたこの村では文字通りのゴールドラッシュに沸き立っていた。

 荒くれものがどんどんと村に入ってきて、あちこちの川で砂金採掘や鉱山夫として活動してきており、その分非常に活気が出て賑わっている。

(その代償として治安の悪化が増しており、村人たちの悩みの種になってきているが。さらに竜に救ってもらった恩義もないため、竜に対する信仰心などもないのも悩みの種といえる。)


「こ、これは竜様!よくお越しいただきました!!竜様のおっしゃる通りの地点を掘ってみたらやはり金が産出されました!ありがとうございます!!」


 村長たちは、エルを見て土下座しながらそれを出迎える。

 やはり、神様扱いされるのは非常に気分がよく、むふーと小型化したエルは自慢げになるが、やはりコメントの突っ込みもそれなりには来る……がやはり人間相手の村なのでそこまで突っ込めないのも事実である。


《クソッ、突っ込みたいけど突っ込めねぇ……。》

《明らかにカルトなんですかそれは。》

《カルト宗教村……。あっ名誉棄損はやめてください!!ボクは何も言ってません!!》


 視聴者もさすがに同じ人類であるためか、発言をそれなりに自重しなければならない、という事情が伺える。


『うんうん、それは良し。けれど、金を掘ると大地の毒素が広範囲に広がって多大な被害をもたらす……いわゆる『鉱毒』が出るから気を付ける事。我も竜であるから自然の化身でもあり、自然に毒がまき散らすのは嫌だからな。これは気を付ける事。』


「ははぁ!!……で、どのような手段が……。」


 金鉱脈を掘るにはいくつかの手段がある。

 地表から鉱脈へと掘り進める露天掘り。

 金鉱脈の側面や崖になっている部分などに水をかけて土砂を崩し、水路に落として金を採掘するのが水圧堀削法。

 水坑内採鉱法は、金脈があると思われる場所に地表から縦に穴を掘り、そこからさまざまな方角に向けて横に穴を掘っていく方法であり、硬岩探鉱法は、金が含まれる石英の岩を爆破したあと堀削し、その後流水を使って金のみを選鉱する方法です。金を最も大量に採掘できる方法とされている。


『この中で一番簡単なのは露天掘りだけど、大変だし廃棄された石も多量に出てくる。確か、タランタシオは水を放出する能力があったはずだから、それを活用してみたらどうかな?タランタシオの水流なら水圧掘削法が十分使えるだろ。

 ほかにも、辺境伯に頼んで、水を放出する魔導具を準備してもらうか……。』


 大量の水が使えるのならば、水圧堀削法と硬岩探鉱法が使用できる。

 だが、これを使えない時、は、水銀やヒ素などを使って金を集める方法も確かにある。おまけに金の製錬の際にはアマルガム法(水銀)や青化法(シアン化合物)といった有毒物質を使用する場合が多く、これらを適切に処理を行わないと、周囲に鉱毒がばらまかれることになる。彼はそれを一番嫌っているのである。


『あとはそうだな。鉱毒を防ぐための水浄化の魔導機械や土浄化の魔導機械が必要か……。』


(そうか……。口で言ってもやっぱり山師などといった実用的な技術をもった人間がいないとダメか。山師とかロクでもないし、きちんとした技術者が必要か。)


 しかし、タランタシオがいてくれれば、水を噴射して金鉱脈掘りも手伝えるだろうし、荷物の運搬や川上りのエンジン代わりにもなってくれるだろう。

 それは頼りにはなってくれるが、やはり専門家がいないと素人だけで金鉱脈を掘るのは不可能である。いや、魔術で位置特定ができるので、掘るのはできなくもないだろうが、それでも効率は非常に悪いだろう。


(どこかできちんとした技術者を見つけてこないとなぁ……。やっぱりドワーフかぁ。銃作りや武器作りなど、いてくれればめっちゃ頼りになるからなぁ。あの例のドワーフたちをこちらに引っ張ってこないとなぁ。)


 とりあえず鉱毒を防ぐためにため池を作ること、後は水浄化や土浄化の魔導機械などを魔術師ギルドから購入できれば、だいぶん心配は少なくなってくる。

 あの魔術師に相談してみるかぁ……。とエルは心の中で呟いた。

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