誰かいる
生田英作
誰かいる
ほーら、何かがいるでしょう?
昼下がり
空き教室の片隅に
日暮れ時
家の廊下の暗がりに
午前二時
真っ暗な部屋の片隅に
いるよ
いるよ
そこにいるよ
そう──
じーっ、とそこから
見ているよ
ほーら、はっきり感じるでしょう?
背中に感じる冷たい気配
うなじに感じる強い視線
そう、閉じたドアの向こうから
そう、押し入れのふすまの隙間から
天井の隅から、鏡から
ドアの陰から、ベッドの下から
ほーら、何かがいるでしょう?
暗くても明るくても
関係ないよ
思い出してもみてごらん
そう、あれはいつのこと?
そう、あれは随分前のこと?
あれ? それほど前でもないか?
いいや、引っ越す前の家?
うーん、子供の頃のこと?
いえいえ、最近のことでしょう
そう──
さっき閉めた戸棚の扉
さっき掛けたドアのカギ
たしかに置いたはずの物
なぜか開いていたでしょう?
なぜか外れていたでしょう?
なぜか動いていたでしょう?
一度ならずあったでしょう
なぜ? と首を捻ったことが
随分前からあったでしょう
つい最近もあったでしょう
ほーら、思い当たるでしょう?
耳を両手で塞いでも
微かに聞こえて来るでしょう?
どこからともなく囁く声と
バタンッ……
何かが勝手に閉まる音
コトンッ……
何かが勝手に落ちる音
そう、電気を消したすぐ後に
瞼を閉じたすぐ後に
閉じたドアの向こうから
階段の先の階下から
静まり返った暗がりの
誰もいないその先の
虚ろな闇の奥底から
聞こえて来るよ
見えて来るよ
感じるでしょう?
聞こえるでしょう?
何かがいるよ?
誰かがいるよ?
でもね──
本当は、もう分かっているんでしょう?
本当は、もう気付いているんでしょう?
そう、だいぶ前から
そう、随分前から
そう──
──────
────────
────────
「 」
誰かいる 生田英作 @Eisaku404
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます