冒険者の原点

 ニラダの母親は両親の用意した縁談がきっかけで結婚したが、お互いに愛しあっていた事も事実であったことを知るが、それは同時に自分の師匠であるガンディーがあきらめざるを得ない事を突き付けられたという光景に複雑な心境であった。


「悪い、俺がしんみりしてどうすんだっつうの、それからだお前の母親はギルド長、っといってもカーリソンのじじいの前のギルド長の娘で、相手の男、お前の父親は冒険者、おっとこれは話したな」

「ああ、縁談とはいっても、実質はほぼ母さんと父さんの気持ちを察しておじいさんが仲介しただけなんだね」

「そしてお前の父親、こいつがお前の冒険者としての原点なんだ」

「そういえばさっきそんな事言ってたね、まさかそれで俺を冒険者にしようと思っていたの?」


 ニラダは自分の父親が冒険者だから、ガンディーは自分を冒険者にしようとしたのかと考えるが、そこで意外な返答がある。


「バーカ、この俺が安直な理由でするわけねえだろう、お前を冒険者として鍛えたのはお前のユニークスキルに可能性を見出し、活きるように鍛えたに過ぎねえ」

「それじゃあ父さんが原点っていうのは?」

「お前の親父も補助魔法しか使えなかったんだ、そのうえお前みたいなスキルはなかったんだ」

「え?それじゃあどうやって冒険者をやっていたの?」


 ニラダの父親も補助魔法しか使えず、ニラダのようなユニークスキルはなく、冒険者をどうしていたか疑問を抱き、それをガンディーはニラダに伝えた。


「あの時は今ほど冒険者の数も多くなく、補助魔法要因とアイテム係としてパーティーに貢献していたが、自分の才能に見切りをつけて冒険者を辞めて薬屋を開いた。お前の母親と結婚したのはそのあたりだった」

「そうだったのか、補助魔法使いだったのに調合スキルはあったのか」

「戦闘系のスキルは才能がなく、ほとんど身に付けられなかったようだが、補助系のスキルは努力して身に付けたようだ。パーティーの為、……お前やお前の母親の為にな……」

「師匠……」

「そんな奴も俺の気持ちを知ってか知らずか、やっぱ冒険者として何も果たせなかったのは悔しくてな、そんな話を俺にしてきやがった、まったくいい迷惑だぜ」

「父さんも悔しかったのか、もしかして父さんは俺に……」

「薬屋でも継がすつもりだったんじゃねえのか知らねえけどな」


 ガンディーはあくまでニラダの才能を活かす為に冒険者にしたに過ぎないと告げるが、父親の言葉に影響を受けていたのではないかと考えるニラダであった

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